是枝裕和監督「三度目の殺人」でベネチア凱旋「感謝」デビュー作5000万“負債”救った

[ 2017年8月30日 12:00 ]

最新作「三度目の殺人」が「第74回ベネチア国際映画祭」のコンペティション部門に出品された是枝裕和監督(C)2017フジテレビジョン アミューズ ギャガ
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 是枝裕和監督(55)が最新作「三度目の殺人」(9月9日公開)を引っさげ、イタリアで開かれる「第74回ベネチア国際映画祭」(8月30日〜9月9日)に参加する。1995年のデビュー作「幻の光」以来、22年ぶりのコンペティション部門出品。凱旋への心境を語った。

 「三度目の殺人」は、福山雅治(48)が初の弁護士役に挑む法廷心理サスペンス。カンヌ国際映画祭審査員賞に輝いた「そして父になる」(2013年)以来、福山と2度目のタッグを組んだ。是枝組に初参加の役所広司(61)は得体の知れない不気味な容疑者を怪演。ベネチア最高賞「金獅子賞」も期待されるが、是枝監督は「意気込んでいないのに意気込みと書かれるから、意気込まないと言うようにしています」と笑った後に「映画祭に対しては、特別な思いはあります」と凱旋への思いを語り始めた。

 「幻の光」は、テレビのドキュメンタリー番組で活躍していた是枝監督の劇場映画デビュー作。作家・宮本輝氏(70)の同名小説を原作に、夫(浅野忠信)を自殺で失った1人の女性(江角マキコ)の喪の作業(グリーフワーク)の過程を、心理描写を廃したロングショットの積み重ねで描いた。ベネチア映画祭「金のオゼッラ賞」をはじめ、キネマ旬報ベスト・テン日本映画4位など、国内外で高く評価された。

 「当時、無名の主演と無名の監督で、5000万円しか集まっていないのに、1億円かけて撮っちゃったんですよ。撮っているうちに、使い込んでしまって。配給も劇場も決まっていない中でも、作れば何とかなると思っていました」

 試写を見終えた人は一様に「いい作品だけど、商売はどうかなぁ」と口にしたという。「出来上がった作品を見てもらえば、すぐに公開が決まると思っていました。甘かったですよね。ヤバいぞ、このままだと、支払いを待ってもらっている5000万円はどうするんだっていう」。1本で終わるのか――。プロデューサーと青ざめかけた時、ベネチア国際映画祭出品が決まった。

 これを機に、95年に開業した東京・渋谷のミニシアター「シネ・アミューズ」(09年閉館)のこけら落とし作品に選出。スマッシュヒットを記録した。「ベネチアが決まってから、トントントントンと、すごくいい形で公開することができました。ベネチアが決まっていなかったら、今の自分がないどころの騒ぎじゃない。5000万円、どうしたんだっていう」と苦笑い。「だから、やはり、ベネチアにはデビューさせてもらったというか、自分のキャリアのスタート。そういう意味でも感謝していますし、22年ぶりと随分、間が空きましたが、またベネチアに行くというのは、とても感慨深いですね」と格別の感情を明かした。

 「DISTANCE」(01年)はコンペティション部門招待、「誰も知らない」(04年)は最優秀男優賞(柳楽優弥)、「空気人形」(09年)は「ある視点」部門、「そして父になる」(13年)は審査員賞、「海街diary」(15年)はコンペティション部門、「海よりもまだ深く」(16年)は「ある視点」部門、とカンヌ国際映画祭の常連。それでも「発見という言い方はあまり好きじゃないですが、ヨーロッパの人たちからすると、僕はベネチアが発見した作家。そうすると、いくらカンヌに行っても『お帰り』とは言われないんです。僕を『お帰り』と迎えてくれるのはベネチアなので。ただ、間を空けすぎたから『もうアイツはカンヌに(乗り替えた)』と思われているかもしれません」。笑いを誘いながら、ベネチア再訪を心待ちにしている。

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