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伝統文化の火を消すな!

 【佐藤雅昭の芸能楽書き帳】歌舞伎でおなじみの「定式幕」だが、森田座、市村座、中村座の、いわゆる江戸三座で三色の配列が違ったという。造詣の深い人からは「何をいまさら」と怒られそうだが、知らなかったのだから仕方がない。

 森田座は左から黒・柿・萌黄の順で、東京の歌舞伎座に伝わっている。市村座は左から黒・萌黄・柿で、千代田区の国立劇場の引き幕がソレ。そして中村座は左から黒・白・柿の並び。平成中村座で使われる。

 劇場によって模様が違うとは思いも寄らなかった。まさしく目から鱗(うろこ)だが、近く歌舞伎観賞にお出掛けの方はぜひ確認してみてほしい。楽しみがちょっぴり増える。

 落語家の春風亭小朝が若手のために「伝統文化講座」を定期的に開催している。参加者は真打ちを目指して勉強中の二つ目さんが中心。筆者も時間が合えば受講しているが、これが実にためになる。「定式幕」の話も、10月3日の講座で取り上げられた。

 その日、講師を務めたのは井関脩智氏。茶人にして、池坊お茶の水学院日本料理科の講師などを歴任。「花健康法」「茶、ちゃ、チャでリフレッシュ」などの著書でも知られる多才な人だ。生け花の歴史についての話も出た。その中で井関氏は「映画にもなるんですよ」と触れていたが、すなわち来年6月3日に公開日が決まった「花戦さ」のことだ。

 鬼塚忠氏の小説「花いくさ」を篠原哲雄監督が映像化。華道中興の祖と呼ばれ、豊臣秀吉に花で戦いを挑んだ池坊専好の生きざまを描く作品だ。狂言の野村萬斎と歌舞伎の市川猿之助の競演も話題で、他に佐藤浩市、中井貴一、佐々木蔵之介、竹下景子ら豪華キャストが脇を固める。

 歴史物とはいえ、ウソがあっても許される映画ではあるが、それでも基本を押さえておかなければ荒唐無稽なものになってしまう。古典落語もいっしょで、知らないまましゃべるのと、知った上でしゃべるのとでは雲泥の差。落語界を担っていく若手にとってはありがたい講座ではある。

 かつて黒澤明監督が「どん底」(57年公開)を映画化するにあたって、五代目古今亭志ん生をスタジオに招き、俳優たちの前で「粗忽長屋」を演じてもらったという話を聞いたことがある。貧乏長屋で暮らす人々の息遣いを感じてもらいたい…それが世界のクロサワの狙いだった。

 「かまど」を意味する「へっつい」など、落語の中に出てくる言葉にも説明の必要なものが増えてきた。いつだったか、桂ざこばが「子別れ」のサゲ「子はかすがい」の「かすがい」が若い人には分からないだろうと、実物を持参した高座に出くわしたことがあった。落語家も映画関係者も、伝統文化の火を消してはならぬと奮闘している。(編集委員)

 ◆佐藤 雅昭(さとう・まさあき)北海道生まれ。1983年スポニチ入社。長く映画を担当。

[ 2016年10月27日 08:00 ]

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