岡田准一 演技と格闘…クロサワ&勝新には“敗北感”

[ 2014年10月14日 11:38 ]

 公開中の映画「蜩(ひぐらし)ノ記」に出演した俳優岡田准一(33)がスポニチ本紙取材に応じ、将来像を語った。興収87億円の大ヒット映画「永遠の0」、NHK大河ドラマ「軍師官兵衛」と話題作が相次ぐ時の人は「日本の心を演じる役者に」と表現。ここ9年取り組む格闘技を突破口に、今はまだ「敗北感がある」という昭和の名優を目指す。

 10年後の切腹を命じられた役所広司(58)演じる元郡奉行の監視役として派遣され、生活を共にする。戸田の藩史編さんを補佐するうちその気高い生き方に共鳴し、師弟愛に目覚めていく。黒澤明監督の愛弟子、小泉堯史監督作品に初参加し、時代劇では初めて剣の腕が立つ侍を演じた。

 2006年「花よりもなほ」は父のあだ討ちを志すも剣は立たず、12年「天地明察」は江戸時代の囲碁棋士で天文暦学者役。「軍師官兵衛」もタイトル通り軍師役。待望の、オファーだった。

 棒やナイフを使うフィリピン武術カリにブルース・リーが創始したジークンドー、総合格闘技修斗。この3つのインストラクター資格を持ち、他に居合、ブラジリアン柔術にも取り組む。「この9年くらい、仕事と格闘技の練習しかしてません」。ストイックな人だ。比較的静かな進行で殺陣(斬り合い)は多くない今作、数少ない撮影を堪能した。

 2007年のドラマ「SP 警視庁警備部警護課第四係」の構想段階から本格的に習いだした格闘技。厳密には14歳でV6としてデビュー後の高校時代にボクシングを教わった。

 しかし本格的にと呼ぶには程遠かった。当時悩んでいた。「力があって仕事ができているとか自分に何がある、何ができるという実感がなかった。“岡田君”より“V6”と言われて生きるようになって大きなものを背負った」。答えを読書に求め、難解な哲学書も読破した。

 V6から暗示されたようにデビュー6年後の20歳で芸能界をやめて大学へ入り、教職に就いて歴史を教えようとも考えた。「25歳で社会人枠で入れば楽かなとか」。長い試行錯誤の末、巡り合った「SP」。役作りで道場へ通いだし、目覚めた。身体を操る術を体得することが、俳優の道につながっている、と。

 オフは立ち技中心に2時間、寝技だと4~5時間練習するという。「強さだけじゃなく先輩を通して学んだ技術、歴史、心。2、3年では勉強できないところまでやり込めた。暴力に暴力で応じるのではない、心が育つまでしっかり教える、教えなきゃいけない立場としてずっと考えてきた。侍に日本男児、軍人。最近こういう役のオファーがくるのは、そのにおいを感じ取ってもらえているのかも」。一方で、見据える頂の高さも痛感する。

 「黒澤明監督は“美しいものを撮りたいんだ”とずっとおっしゃってたそう。黒澤映画や勝新太郎さんを見ると敗北感があります」

 勝さんの殺陣とその構成力に勝てないと思うのは日本を理解し、理にかなった、岡田いわく動きの「優美さ」で及ばないと自覚するから。一例にフィギュアスケートを挙げ、無駄を極限までそぎ落としたものこそが人の心を打つと強調する。自身のベクトルと一致した、黒澤監督の下で学んだ小泉監督の演出を仰いだ今作の成果、映画館で確認してほしい。

 ◆岡田 准一(おかだ・じゅんいち)1980年(昭55)11月18日、大阪府枚方市出身の33歳。1995年にV6としてデビュー。03年公開「木更津キャッツアイ 日本シリーズ」で映画初主演。

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