楽天・滝中 9回1死まで無安打投球 球団初ノーノーならずも「僕っぽい」

[ 2023年5月15日 05:30 ]

パ・リーグ   楽天5ー0西武 ( 2023年5月14日    ベルーナD )

<西・楽>7回、外崎を空振り三振に仕留めガッツポーズする滝中(撮影・尾崎 有希)
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 プロ4年目で2番目に多い、この日の123球目だった。9回1死一塁。マウンドの楽天・滝中は「フォークが落ち切らんかった…」と悔やんだ。代打・平沼に右前打。05年創設の球団初となるノーヒットノーランは、あと2人で夢と消えた。

 「意識はずっとあった。こんな機会はないし、やれる時にやりたいと思ったけど…。僕っぽい」。快挙も、自身初の完封、完投も逃したが8回1/3を1安打無失点で2勝目。縦に大きく曲がる最遅94キロのスローカーブで西武打線を手玉に取った。計31球。「勇気はいる。でもあんなに遅い球は待たないと思う」と打者9人に初球カーブから入って幻惑した。

 6回1死から6者連続三振。4番・中村には昨年5月13日に101キロのカーブを本塁打されたが、7回1死では恐れることなく初球に96キロのカーブを投じた。最後は127キロフォークで三振に斬り、通算462本塁打の主砲を「めちゃ遅い。ゾーン内に決めてくるので打ちにいくのが難しい」と脱帽させた。

 龍谷大1年時に右肘じん帯再建術(通称トミー・ジョン手術)を受け、リハビリで投げ始めた球種。当時から岸(楽天)のカーブを参考に磨きをかけた。直球は最速143キロも緩急差は49キロ。「僕も速い球は投げたいけど…。投げられないし、ないものをねだっても仕方がない」。これぞ滝中の矜持(きょうじ)。誇りを胸に秘めた投球だった。

 試合前に母・明美さんから「今日はおじいちゃんの誕生日よ」とメールが届いた。京都に住む母方の祖父の83歳の誕生日。「それも母の日ということで。良かったです」。ロッテ・佐々木朗の165キロなど速球投手全盛の時代。味わいあふれる滝中の123球だった。(鈴木 勝巳)

 ◇滝中 瞭太(たきなか・りょうた)1994年(平6)12月20日生まれ、滋賀県出身の28歳。高島から龍谷大に進み、関西六大学リーグで通算16勝。Honda鈴鹿では1年目から主力として日本選手権に2度、都市対抗に3度出場した。19年ドラフト6位で楽天入団。20年10月11日の西武戦でプロ初勝利を挙げ、21年は10勝で自身初の2桁勝利。昨季は15試合で2勝9敗、防御率4.62だった。1メートル80、93キロ。右投げ右打ち。

 ≪今季の先発5回以上無安打はパが9人、セが1人≫滝中(楽)が9回1死まで無安打投球。球団初のノーヒットノーランこそを逃したが、チームでは20年8月5日ソフトバンク戦の涌井(現中日)に並ぶ試合開始からの最長イニング無安打になった。また、今季両リーグの先発投手では、4月13日ロッテ戦の今井(西=7回1/3無安打)を抜く最も惜しい投球だった。なお、今季、先発5回以上を無安打に抑えた投手はセ、パ通じ延べ10人目になるが、セは4月12日巨人戦の村上(神=7回)だけで、9人がパ・リーグ勢だ。

 ≪最遅94キロカーブは約25%≫滝中がこの日の西武戦で投じた123球のうち、最多はカットボールの36球だった。カーブは2番目に多い31球で、その割合は全体の4分の1を占めた。直球はフォークに次ぐ4番目の21球だけで、全体の17・1%に過ぎなかった。

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