前DeNA・高城現役引退 「4本塁打+最高の1発」をいつまでも忘れない

[ 2022年12月11日 07:30 ]

17年11月1日のソフトバンクとの日本シリーズ第4戦。2―0の7回無死から本塁打を放つ高城
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 思わず泣きそうになった。「ありがとうございます。僕が打った数少ないホームランですから。覚えてもらっていればうれしいです」。

 DeNAから戦力外通告を受けていた高城俊人捕手が8日、現役引退を表明した。冒頭の言葉は、マスクを置くことを決意したあと、記者との会話で高城が最後に口にした一言だ。

 17年11月1日のソフトバンクとの日本シリーズ第4戦(横浜スタジアム)。3連敗の崖っぷちでスタメンに名を連ねた高城は、2―0の7回無死から3番手の五十嵐が投じた初球を左翼席に運んだ。「今でも自分のモチベーションを上げるときに、動画を見て思い出す」と笑う。

 だがプロ生活11年と経験豊富な29歳も、「戦力外」に気力は続かなかった。現役続行にこだわり他球団から声がかかることも待ったという。「でも練習を続け体を動かしていても、期間があけばあくほど(気持ちが)乗り越えられなくなった。何も先が見えなくて…」。

 現役時代は明るい性格でベンチでの盛り上げ隊長。高城の周囲でナインの笑顔があふれる光景を何度も見てきた。それだけに、しみじみと語る高城に記者も心が震え始めた。

 応援歌は「♪強肩強打の凄い奴~」の歌詞で始まる。98年に横浜(現DeNA)を日本一に導いた「ハマの司令塔」谷繁元信氏(元中日監督)の応援歌も、メロディーは違うが同じ歌詞で始まった。それだけ高城への期待は高かった。

 記者は日本シリーズの一発を、バックネット裏最後列で見届けていた。球場は異様な盛り上がり。高城と同じく記者もそのときを思い出すと、モチベーションが上がる。

 通算347試合、打率・172、4本塁打、38打点。選手の記録を残すとき、「ポストシーズン」の成績は含まない。

 だからしっかりと記しておきたい。高城「4本塁打+最高の1発」。最高の舞台で放った放物線をファンはいつまでも忘れないだろう。(記者コラム・大木穂高)
 

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2022年12月11日のニュース