阪神・岩崎が明かす守護神の苦悩「スタンドがみんな“敵”に見えた」 苦境乗り越えCSへ決意新た

[ 2022年9月16日 07:30 ]

阪神・岩崎の独占企画「成し遂げる」

スポニチ本紙に思いを打ち明けた阪神・岩崎(撮影・北條 貴史)
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 阪神の岩崎優投手(31)が、本紙に塩対応ではなく思いの丈を打ち明ける企画「成し遂げる」で守護神としての知られざる苦闘を明かした。8月は2試合連続の救援失敗で配置転換も経験。ホームの観客席が“敵”に見えるという逆境も味わった。14日の広島戦(甲子園)では球団左腕最多タイの今季26セーブ目を挙げるなど復調。再び“最後のとりで”として君臨するシーズン最終盤。一つでも上の順位を目指し、フル回転する決意も口にした。

 どんな時でも背中を押してくれていた空間が、その夜だけは違った。「言葉は悪いかもしれませんが、あの日だけはホームなのにスタンドがみんな“敵”に見えましたね」

 8月14日の中日戦(京セラドーム)は終盤まで4対4の熱戦だった。同点の9回、岩崎の名がコールされると場内に響いたのは守護神の登場を喜ぶ歓声だけではなかった。直近の同6日の広島戦(マツダ)で3点リードを守れず4失点(自責0)で逆転サヨナラ負け。ホームを包んだ“アウェー感”は、その救援失敗が多少なりとも影響していた。

 「ネットとか記事とか、外からも“岩崎は9回じゃない”という声も耳に入ってきていたので。そういうものも含めてスタンドにいる人は、誰も自分がここ(9回)で投げることを求めていないんだなと。プロに入って初めての感覚。メンタルに影響してしまった」

 マウンドでは感情を表出させない“鉄仮面”の心が大きく揺れた。異常事態とも言える心理状況はそのまま結果にも表れる。1死一、三塁と追い込まれ、最後は暴投で勝ち越し点を献上。そのままチームは敗れた。登板2試合連続の乱調で首脳陣は配置転換を決断。不振のケラーに代わり4月上旬から25セーブを積み上げてきたクローザーの座から陥落した。「チームから任されたポジションなので、もちろん悔しい。しばらく気持ちを切り替えるのは難しかった」。

 セットアッパーとの違いを痛感する毎日だった。「全然違いました。精神面も、体の疲労も…その積み重ねもあって8月は状態が悪いというのは自覚していた」。6月の不調時は「3つある」という投球フォームを状態に合わせて使い分けるなど、試行錯誤して乗り切ったが、夏場に再び調子は下降した。

 配置転換後はセーブやホールドの付かない場面、同点の6回、延長10回などさまざまな場面で起用された。「それも前向きにとらえて。どこを任されても結果を出せるぞ、と。どこでも投げられるのは自分の特徴だし、他の投手にはないところだと思うので。今までも経験してきたので、切り替えてやった」。

 9月14日の広島戦(甲子園)は1点リードの9回を3人で打ち取り、8月5日以来となるセーブを挙げた。「残りの試合は少ないですが、投げた試合で自分は勝利に貢献していくだけなので。可能性がある限り(チームとして)一番上を目指していきたい」。苦しみ、波の激しい1年だからこそ、最後は“上向き”に突き抜ける。(遠藤 礼)

 ▽8月以降の岩崎 8月5日の広島戦までリーグ2位タイの25セーブ(1勝3敗)だったが、6日広島戦と14日中日戦で自身初の救援2試合連続黒星を喫して中継ぎに配置転換された。9月14日の広島戦で1点リードの9回を3人で打ち取り、8月5日以来9試合ぶりの26セーブ目。阪神では82年山本和行に並ぶ左腕最多としている。

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2022年9月16日のニュース