群馬で「1打数2安打」の珍事 桐生第一の鶴田京平が「まぼろし~」からのうれしい公式戦初安打

[ 2022年7月10日 12:42 ]

第104回全国高校野球選手権群馬大会1回戦 ( 2022年7月10日    上毛新聞敷島 )

打ち直しの打席で左翼線へ二塁打を放った鶴田(撮影・柳内 遼平)
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 20年春以来の甲子園出場を目指す桐生第一は、吉井に14―0で5回コールド勝ち。5回に代打で公式戦初出場を果たした鶴田京平(2年)の打席で珍事が発生した。

 嫌な予感がした。13―0の5回2死二塁から鶴田が代打で登場。1メートル72の右打者は左中間を破る会心の当たりで二塁に到達すると、審判団がマウンド付近に集まり協議を開始した。「何かあるんだろうな…」の予想は的中。公式戦初打席でマークしたうれしい初安打は取り消しとなった。

 ほんの一瞬の出来事だった。鶴田が快音を響かせる直前、一塁側ベンチ前でキャッチボールをしていた桐生第一の選手が悪送球。右翼手の後方を転がるボールに三塁塁審が気づき、投手が投球動作に入る前だったため「タイム!」を宣告。しかし、集中していた投手はそのまま投球し、鶴田は直球を捉えた。

 グラウンドに立つ4人の審判員のうち、1人でもタイムを宣告すれば「ボールデッド」となり、その後に行われたプレーは無効となる。鶴田には酷だが、審判団の判断は当然のジャッジだった。だが、無念の打ち直しとなった打席でも「切り替えて打つしかない」と冷静だった。今度は真ん中高めのカーブを叩いて三塁線を破る適時二塁打。幻となった安打と合わせて「1打数2安打」に二塁上でガッツポーズ。「受け身にならずに体が反応できた。最高です」と笑顔が輝いた

 三重県亀山市出身。故郷から遠く離れた群馬に越境して甲子園出場の夢を追う。桐生第一では選手の投票と監督の承認でベンチ入りメンバーが決まる。鶴田はパンチ力のある打撃と、内野はどこでも守れるユーティリティー性を評価されて初のベンチ入り。3週間前には三重に帰省し、母・里美さんがつくるハンバーグを頬張り、心身ともにリフレッシュして大会に臨んだ。今泉壮介監督は「鶴田は思いきりがいい。今日みたいに積極的に自分の良いところを出してほしい」とさらなる活躍を期待した。

 「川や自然がいっぱいある。通学の自転車の時に気持ちいいなと思う」と群馬を愛する男。自らの安打も、チームが夢に掲げる甲子園出場も「幻」にするつもりはない。(柳内 遼平)

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2022年7月10日のニュース