【東京五輪まで1年】侍・稲葉監督、中畑氏と特別対談 日本のエースは菅野&千賀 ユーティリティー大切

[ 2019年7月24日 09:15 ]

東京五輪開幕まであと1年

厳しい表情で勝負に臨む侍ジャパンの稲葉監督(右)と本紙評論家の中畑清氏(撮影・荻原 浩人)
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 悲願の金メダルへ――。侍ジャパン・稲葉篤紀監督(46)と、脳梗塞で倒れた長嶋茂雄監督(83)に代わって04年アテネ五輪で指揮を執った中畑清氏(65=スポニチ本紙評論家)の対談が実現した。中畑氏が自身の経験談も交えてアドバイスを送ると、稲葉監督もチーム編成の一端を明かすなど、熱いトークが繰り広げられた。(構成・鈴木 勝巳)

 中畑 (水を手に)前祝いで乾杯しよう。ちょうど1年前。気持ちは高ぶってきてる?

 稲葉 少しずつ、高ぶってきています。

 中畑 1年間は結構、早い。俺らはチームづくりに1年半かかった。準備という点で、稲葉流のチームづくりのイメージは?

 稲葉 やはり一発勝負なので。投手でいえば、自分の持っているボールを初球から投げ切れる。打者なら狙っている球を初球からしっかりスイングできる選手が必要と思っています。

 中畑 アテネ五輪の選手登録枠は24人。投手、捕手の人数をどうするか本当に難しい。ユーティリティープレーヤーの存在も大切になる。

 稲葉 何人か候補はいます。今はどのチームでも、いろいろなポジションを守れる選手が増えている。例えば巨人の岡本選手は外野も、一塁も三塁もやっている。そういう意味ではありがたいですね。

 中畑 新しいアイデア、稲葉流を楽しみにしているよ。期待している投手は?

 稲葉 経験は非常に大事。そうすると菅野、千賀投手は今の日本のエース。彼らには期待しています。

 中畑 先発、中継ぎ、抑え投手は、それぞれの役割で選ぶ?

 稲葉 中継ぎ専門職というのは、絶対に入れないといけないと思っています。あとは先発をしている投手が中継ぎに回ることも想定していますね。

 中畑 その形のために、投手は何人でイメージしているのかな。

 稲葉 10人か、11人にするのか…。捕手も2人か3人か。

 中畑 3人は難しいと思うよ。俺の時は城島と相川の2人。24人枠で2人しか選べなかった。

 稲葉 アテネ五輪のコーチは2人(注・登録は3人。長嶋氏不在で中畑ヘッド兼打撃コーチが指揮を執ったため2人に)ですよね。ブルペンとの連携はどうされていたのですか?

 中畑 相川が裏方に徹して、伝令役とか全てやってくれた。投手コーチの大野(豊)はベンチにいて、ブルペンとの距離感を縮めるには選手が動いてくれるしかない。その役割を、覚悟を持ってやってくれる選手がいないと厳しい。あと、野手で外せない選手は坂本(勇)とか。

 稲葉 今の状態でいけば当然、経験もありますし。あとは秋山選手も候補として考えたい。

 中畑 そこはぽんぽんと名前が出てくる。そこから、他の選手をどう選出するか。

 稲葉 調子に関係なく必要な選手と、調子によって選ぶ選手。それはあると思います。

◆「持っている」と感じた選手は…

 中畑 実績、名前にこだわらない。

 稲葉 あとは「意外性」というか、短期決戦に強い選手というのがジャパン(の監督)をやってみて凄く感じたことです。

 中畑 例えば?

 稲葉 ロッテの田村選手。彼はそういう鋭い勘というか、打撃でも守備でも、ここっていう時に「持っている」とは感じました。捕手としても、ベンチに帰ってきた時に投手の状態などをしっかり伝えてくれる。

 中畑 それは田村、喜ぶなあ。抑え投手の部分は?

 稲葉 流動的に、と考えています。あまり固定はしない。2人なのか、3人なのか。国際大会は重圧や緊張感がある中で投げる。先発投手は普段より疲れると思う。なるべく早い段階で次の投手にスイッチするのがいい、と考えています。

 中畑 チームづくりでは、性格を含めて選手を知るのは大変だ。性格はやっぱり大事。俺は所属チーム内でどういうタイプの選手か、情報は凄くもらった。ミスターの言葉「フォア・ザ・フラッグ」を大事にする人間性を持った選手も選出した。

 稲葉 そのために、私が監督になってから4度、(代表が)集まった。そこで選手を見ることができました。

 中畑 短期決戦。自己犠牲を惜しまない人間性に着目しないで、チームづくりをするとしんどいと思う。年齢的な部分は?俺の時は宮本慎也を主将に指名して、それより年上の選手は選ばなかった。

 稲葉 なぜですか?

 中畑 主将によるチームのまとめやすさ、というか。我々は年功序列で育った。指示も出しやすい。一番の長老、ベテランの選手に主将を任せて、チームをまとめてもらうという配慮をした。

 稲葉 キャプテン制度がいいのかどうか。ある程度まとめてもらう選手はつくろうと思っていますが、主将を指名するかどうかは考えています。

◆金メダルの重圧は半端じゃない

 中畑 出場しそうな国の特徴、データはインプットされている?

 稲葉 今年11月にあるプレミア12で情報収集はしっかりしたい。前回(15年)は小久保監督の下で打撃コーチをやらせていただきました。(他国が)どういう野球をするか、というのは前回大会で分かったので。

 中畑 情報は自分の目で見るのが一番大事。プレミア12を最大限に利用したいね。

 稲葉 負けたチームは3月に五輪最終予選がある。我々も行って、しっかり見てきたいなと思っています。ところで中畑さん、実際に五輪で指揮を執って難しかったことは?

 中畑 知らないチームが来た時の怖さ。例えば“こんないい選手がいたの?”と慌ててしまう。そういう空気をつくってしまうのは怖い。だから、全てを網羅した情報じゃないと意味がないんだ。

 稲葉 結構サインは出されましたか?

 中畑 全部出したし、動かしたよ。オーストラリアには見抜かれたけど…。エンドランで外された。俺は平行カウントでサインを出すタイプで、向こうは癖を分かっていた。捕手に(元中日の)ディンゴがいて見抜かれたのはあった。短期決戦。向こうも情報収集はしてくる。最後に稲葉ジャパンの戦いのメッセージ、テーマも聞きたいな。

 稲葉 とにかく、熱いメンバーで熱い戦いをしたいですね。

 中畑 俺、自分で自分を褒めたいけど、(アテネ五輪で)それができた。予選から一戦一戦、あれだけ集中して野球をやれた記憶はない。力を出し切れた、燃え尽きたって。銅メダルだったけど全然恥ずかしくなかった。

 稲葉 周囲からは金メダルを期待され…。

 中畑 期待じゃなくて、獲るのが当たり前だった。長嶋さんが倒れて、長嶋さんの病気を治すためにも金メダル、というのが合言葉。プレッシャーは半端なかった。

 稲葉 金メダルには届かず残念だった。

 中畑 やることはやり切ったという自負はあったからね。国民の皆さんにも、長嶋ジャパンの最高のパフォーマンスを見ていただいたと思う。結果的には銅メダルだったけど…。勝負の世界だもん。山あり谷ありですよ。そんな特別な勝負となる五輪まで1年、プレミア12まで4カ月。やっておきたいことは?

 稲葉 しっかり選手を見て、(12球団の)監督、コーチからいろいろな情報を教えていただくのは引き続きやっていきたい。例えば投手で、悪くなる傾向の時や代え時はこういう時、というのも教えていただいています。

 中畑 とにかく、命懸けだよ。日の丸の重さを感じてプレーできるのは、あなた方しかいない。それを誇りと思って戦ってください。期待しています!

 ◆稲葉 篤紀(いなば・あつのり)1972年(昭47)8月3日生まれ、愛知県出身の46歳。中京から法大を経て、94年ドラフト3位でヤクルト入り。04年オフに日本ハムにFA移籍。日本代表として、08年北京五輪、09、13年のWBCに出場。14年に現役を引退した。通算2213試合に出場し、2167安打で打率.286、261本塁打、1050打点。左投げ左打ち。

 ◆中畑 清(なかはた・きよし)1954年(昭29)1月6日生まれ、福島県出身の65歳。駒大から75年ドラフト3位で巨人入団。「絶好調男」として人気者に。2004年アテネ五輪日本代表ヘッド兼打撃コーチとして指揮を執り、銅メダルに導く。12年DeNA初代監督。現在はスポニチ本紙評論家。

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