【次のスターはオリまっせ】小林慶祐投手 “脱力”でチャンスの誘惑に負けず…ローテ入りへ前進

[ 2019年2月27日 14:36 ]

今キャンプ、着実に結果を積み重ねている小林慶祐
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 オリックスの次世代スターを発掘する当コラム。第9回目は小林慶祐投手を取り上げる。

 宮崎キャンプも23日から第5クールを迎えた。いよいよ対外試合が始まったが、ここまでに行われた7度の紅白戦で、着実に結果を積み重ねたのが3年目の小林だ。10、14、20日と3度の登板は全て無失点。3度とも“無傷”で終えたのはK―鈴木と2人だけだ。そのK―鈴木も25日の紅白戦で吉田正に特大アーチを浴びるなど4失点した。小林が奏功している点は何か。「今はフォームのバランスを意識してやっています。脱力。自分は力む癖があるので、(臨時コーチの)山田久志さんからとにかく力を抜くように、と。その方が変化球もコントロールしやすい」と助言を受けた。ブルペンでは特に投げっぷりの良さが目立つが、リリースの直前までいかに力を抜けるか。そのテーマを実戦マウンドでも貫けたことが結果にも出ているようだ。

 「チャンスを意識しすぎないように。結果を求めすぎると自分はダメなので、内容を求めたい」

 投手には難しいテーマかもしれない。金子、西と抜けたチーム事情に「チャンス」と思わない投手はいない。しかし、小林はその誘惑に乗らない。「去年はとにかくゼロに抑えたい。結果を出したい、と言い続けたんです。でも、内容にこだわらないと結果もついてこないことに気がつきました。上で結果を残している選手は、内容にこだわっている。自分はテンションの上がり下がりが激しくて、切り替えが必要だと先輩方に言われました」。その反省もあり、今は結果は求めないと誓っている。

 日本生命から入団した3年目の26歳。スラリとした1メートル87の長身でクールに見られがちだが、実は後輩からもツッコまれるチーム1のいじられキャラだ。そんな小林といえば、ファンには忘れられない光景があるだろう。入団1年目の17年9月30日のソフトバンク戦で打球が顔面に直撃し流血。マウンド付近で倒れ込んだため、救急車を京セラドーム内に直接入れる措置を取り、緊急搬送された。精密検査の結果、大事には至らず、右まぶたの上を8針縫合するだけで済んだが、少しでも打球がずれていたら眼球破裂、失明などの可能性もあったという。当時は大きなニュースになったほどだ。

 幸いにも程なく復帰できたが、巻き返そうという思いと結果は比例しなかった。昨季から本格的に先発転向したものの、ウエスタン・リーグでは0勝4敗。4つの黒星は全て先発試合だった。昨季は1軍で7試合に登板したのみ。先発機会はなかった。

 「本当に1試合ごとに浮き沈みがあった。結果ばかり見ていると、何が良かったのか、何が悪かったのか、整理できなくて。もっと過程を見ないとダメなんだ、と分かりました」

 その反省があるからこそ、紅白戦の無失点登板が続いても一喜一憂することはない。ただ、内容は悪くない。捕手の若月は「角度のある投球で、両サイドに投げ分けられる。フォークもスライダーもカーブも、ほとんどストライクが取れますから」と、好調の要因を口にした。課題をクリアしつつ、内容が伴っている証拠だろう。

 26日のロッテ戦では、3回を投げて無安打無失点。1人の走者も出さない完ぺきな内容で、同じマウンドに上がったアルバース、山本にも遜色ない。それでも小林は「カーブ、スライダーの精度が悪くて、はっきりと課題の出た試合でした。ブルペンであれだけ意識していたんですが、試合になるとできなかった。ファウルで粘られると、自分は直球だけになって、しんどくなってしまう。大きな課題が見つかったのが収穫です」と笑わなかった。

 今春は4度の実戦登板で、9回を3安打無失点。ついに完封してしまった格好だ。先発ローテーション入りがグッと近づく中、それでも一喜一憂せず、次の登板を見据えている。(当コラムはスポニチホームページで不定期連載中)

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