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光った若手の活躍 リトバルスキー氏が見た“新しいドイツ”

[ 2010年6月15日 13:51 ]

<ドイツ・オーストラリア>初戦でゴールを決めた20歳のミュラー(中央)

 【リトバルスキー氏のスペシャル興奮観戦記 ドイツ4―0オーストラリア】オーストラリア戦の快勝は“新しいドイツ”を世界に示したと言えるでしょう。将来につながる新しいプレースタイル。攻撃的で、ボールを支配し、パスをつなぎ、人が動き、決定力がある。オフェンス重視のサッカーを目指すレーブ監督が4年間で築き上げてきたものです。今大会ここまでで最高の攻撃力を発揮しました。ミスもあったので、点はもっと取れた。アルゼンチンもいい攻撃をしていましたが、ドイツの方が上。これで有力な優勝候補と見られるようになったと思います。

 FWのクローゼは素晴らしいパフォーマンスでした。かつての好調時に戻りつつある。バイエルン・ミュンヘンではチャンスに恵まれませんでしたが、あのゴールで自信を取り戻せる。私はドイツ大会に続く史上初の連続得点王も可能だと思います。なぜなら、豊富なパスを供給してくれる中盤の選手に恵まれているからです。

 中でも私が注目しているのが、トップ下のエジルと右サイドのミュラー。エジルはラストパスを出せるし、ミュラーはゴール前で決定的な仕事ができる。それぞれ21歳、20歳と若いですが、国内リーグの他に欧州CLや欧州リーグというレベルの高い舞台でもまれており、経験は十分。昨年のU-21欧州選手権で彼らを中心に優勝して、エジルはMVPに輝いています。クローゼもそうですが、大事なのはピッチ上での結果で年齢は問題ではないのです。

 個人的にも興味があるのが、オーストラリア戦で途中出場したMFマリンですね。彼もU-21欧州選手権Vメンバーの21歳。“リトバルスキーの再来”と呼ばれているそうですが、大柄ではないがドリブルが得意でテクニックもある。私のプレースタイルに似ていると思いますね。皆さんにも注目してほしいと思います。

 ここまでの試合を見る限り、優勝候補でドイツに続くのはアルゼンチンではないか。90年イタリア大会の決勝で対戦したマラドーナ監督は、攻撃的でいいチームをつくってきましたね。規律があって戦術もいい。まだ試合は見ていませんが、オランダ、スペイン、そして、いつも通りブラジルも有力候補でしょう。

 私たちが90年イタリア大会で優勝した時、1次リーグ初戦でユーゴスラビアに4-1と大勝しました。今回の勝利は、その時と同じ感じがします。当時のチームにはマテウス、クリンスマン、ブッフバルト、フェラーらタレント性のある選手がいましたが、今回のチームにも十分、能力の高い選手がそろっています。バラックの負傷欠場は残念ですが、クローゼの得点をアシストしたラームは頭がいい素晴らしい選手で、新主将としてチームをまとめている。課題を挙げるとすれば守備をしっかりすることと、無駄なカードをもらわないこと。20年前同様勢いに乗って、優勝してほしいですね。(元西ドイツ代表、ボルフスブルク・コーチ)

 ▼ピエール・リトバルスキー 1960年4月16日、ドイツ・ベルリン出身の50歳。現役時代はドリブルを得意とし、ケルン、市原(現千葉)、仙台などで活躍。ドイツ代表通算73試合18得点。W杯は82年スペイン大会準優勝、86年メキシコ大会準優勝、90年イタリア大会優勝に貢献。引退後は監督として横浜FC、シドニーFC、福岡などを指揮。今月、ボルフスブルクのコーチに就任。

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2010年6月15日のニュース