【コラム】海外通信員

VARを導入したセリエA いずれ1試合4時間に?

今季からVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリーシステム制度)を導入したセリエA
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 今季から、世界各国リーグの一部でVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリーシステム制度)が試験導入されている。ファウルなどの判定が微妙な時に、主審がピッチ上でビデオ映像を確認し精査ができるというものだ。オランダが先駆け、国際サッカー連盟(FIFA)が2016年のクラブ・ワールドカップで試験導入し、今シーズンからブンデスリーガやMLSでの運用も開始された。そして、その流れにイタリアも乗った。

 この国のサッカー界にとっては大きな意味があった。結果にシビアなイタリアでは、選手のパフォーマンスと同様にジャッジングも常に話題の中心になっていたからだ。新聞の採点は選手のみならず主審にもつけられ、試合中に誤審がなかったかどうかは新聞やテレビで検証される。重大な誤審が発生した場合、テレビ番組に至ってはそれをめぐる討論で放送時間を丸々使い切ってしまうほどだ。当然選手や監督、クラブ関係者を巻き込んで延々と批判の応酬は続き、1週間その話題で語り尽くされていた。

 もちろんそれは正確なジャッジングを呼ぶという良い面もあるのだが、時にスポーツマンシップを欠いた舌戦となることに批判の声もあった。一時期検証を自粛するメディアも現れたものの、結局なしのつぶて。そんな甚大なプレッシャーの中で疲弊していたのは審判団であり、公平性を助けるシステムの導入を彼らは待望していた。そしてイタリアサッカー界は、VAR導入の動きに乗ることなる。本来はセリエBからの試験導入を考えていたのだが、審判団の強い要望によってセリエAで導入されることになった。

 そして8月19日の開幕戦から、VARは早速稼働した。ユベントスvsカリアリ戦の前半37分、ユーベのDFアレックス・サンドロがカリアリMFチョプをエリア内で倒した。しかし、マレスカ主審はPKを宣告せず、カリアリの選手たちからは疑問の声が上がる。迷いを抱いたマレスカ主審はVARの参照を決め、検証の結果カリアリにPKが与えられた。筆者が取材した20日のインテルvsフィオレンティーナ戦でもそうだった。DF長友のミドルパスにFWイカルディが反応し、エリア内でボールを受けたところ相手DFのアストーリと接触し倒れる。タリアベント主審はVAR付きのアシスタントレフェリーに確認するよう指示を出し、その結果PKの宣告を決めた。

 サッカーのジャッジングにおいて絶対的な裁量を持つのは主審であり、VARはあくまで従属する立場をとる。ジャッジングの中で迷いが生じた時に、主審はVARの検証を決めるのだ。もちろん、試合中にリアルタイムで映像をチェックするアシスタントレフェリーも配置されており(ブンデスリーガなどは通信映像を介して一局集中管理を行うが、セリエAの場合は各会場に置く)、必要があれば主審に助言をすることもできる。あくまで、正確なジャッジングのために主審のジャッジをサポートするためのもの。映像判定システムが先に導入されたテニスやバレーボールと違い、選手や監督の側から異議を申し立てる「チャレンジ」システムはない。

 そして2ヶ月が経過した現在、セリエAにおいてVARは概ね機能している。特にシステムトラブルもなく、誤審の低下に寄与している。今季から審判選定委員長を努める元審判のリッツォーリ氏は「VARが私の時代にあれば、重大な誤審のうち4つ、5つはせずに済んだだろう」と語る。もっとも、課題がないわけではない。主審が判断に迷った時に参照をするという性格上、検証から決断までのプロセスには時間が掛かる。そしてそれには、選手や監督からは強い不満が寄せられる。

 最たるものが、10月1日のアタランタvsユベントス戦。後半42分、ディバラのFKが壁に入っていたアタランタFWペターニアの腕に当たったとして、ダマート主審はPKを宣告。しかしアタランタの選手側から「肩ではなかったか」との抗議を受けて、VARの参照を決めた。そしてPKを宣告するのだが、ここまで要した時間は約2分。ユベントスのアレグリ監督は、主審が相手側からの抗議の末VARでの判定を行ったことに強く不満を抱き、地元メディアに対し「(シーズン大詰めとなる)来年の春には、1試合終わるまでに4時間ぐらい掛かることになるだろうさ」などと皮肉った。VARが導入されてもなお、主審がプレッシャーで胃を痛める日々は変わらない?(神尾光臣=イタリア通信員)

[ 2017年10月21日 20:00 ]

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