松本白鸚 「私の人生そのもの」ドン・キホーテの旅が終わった 「ラ・マンチャの男」1324回で幕

[ 2023年4月25日 05:30 ]

ミュージカル「ラ・マンチャの男」のファイナル公演で千秋楽を迎えた松本白鸚(中央)
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 歌舞伎俳優の松本白鸚(80)が半世紀以上にわたり主演してきたミュージカル「ラ・マンチャの男」のファイナル公演が24日、神奈川・よこすか芸術劇場で千秋楽を迎えた。カーテンコールでは鳴りやまない拍手の中、白鸚は「これからも命のある限り、芝居を続けてまいります」と生涯現役を宣言。1324回目の公演となるこの日、次女の松たか子(45)ら共演者と1300人の観客に見守られ、伝説の舞台に終止符を打った。

 「人呼んでラ・マンチャ。ドン・キホーテ!」。おなじみの名乗りと共に、白鸚は“最後の旅”へと向かった。劇中歌「見果てぬ夢」を披露すると客席からは「ブラボー!」の声も。「事実とは、真実の敵なり」といった名せりふの数々に、会場にはすすり泣く声も響いた。

 白鸚自身が「私の人生そのもの」と表現する舞台。1969年に当時26歳で初演。70年には、米ブロードウェーに招待され全編英語で上演。単独主演舞台での上演回数1324回は、日本では森光子さんの「放浪記」、堂本光一(44)の「SHOCK」シリーズに次ぐ3位だが、54年にわたる上演は最長記録。延べ100万人以上が観劇したとみられる。「勧進帳」の武蔵坊弁慶と並ぶ白鸚の代表作として親しまれてきた。

 本来は昨年2月がファイナル公演となる予定だったが、新型コロナウイルスの影響で25公演のうち18公演が中止に。今回はその仕切り直しだった。満身創痍(そうい)の中、傘寿として迎える主演舞台。肉体的にもハードだが、舞台をはける際には共演者がその体を支えたりと、カンパニー一丸で公演を駆け抜けた。

 カーテンコールでは、会場を見渡しながら何度も頭を下げた。松から花束を受け取ると、目を潤ませる場面も。「皆さまのおかげで今日までこられました」と感謝し、キャスト全員で「見果てぬ夢」を合唱した。舞台上では生涯現役を宣言し観客を沸かせた。主人公ドン・キホーテには別れを告げたが、俳優としての夢路はまだ続いていく。

 ▽ラ・マンチャの男 16世紀のスペインが舞台。「ドン・キホーテ」の作者として知られる劇作家セルバンテスが宗教裁判にかけられて投獄される中、獄中で即興劇「ドン・キホーテ」を上演するという内容。白鸚はセルバンテスとキホーテの2役。65年にブロードウェー初演され翌年のトニー賞でミュージカル作品賞を含む5部門を受賞した。

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2023年4月25日のニュース