鹿児島までスカウトが来た、見た、撮った 「160キロ投げられる」仙台育英・仁田陽翔はプロ入りなるか

[ 2023年10月12日 21:25 ]

鹿児島国体・高校野球硬式の部準決勝   仙台育英9―7北海 ( 2023年10月11日    平和リース )

国体高校野球硬式<北海・仙台育英>仙台育英2番手・仁田(撮影・村上 大輔)
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 【仙台育英が有終の美】

 今夏の甲子園で準優勝した仙台育英(宮城)は9―7で北海(北海道)に逆転勝ちし、11年ぶり2度目の優勝を果たした。昨夏に東北勢として初の甲子園大会優勝に貢献した3年生は全ての公式戦を終えた。降雨延期による影響で決勝は開催されず、準決勝2試合で優勝2校が決まった。


 【逸材揃いのメンバーで2人がプロ入りを狙う】

 侍ジャパンU18高校日本代表ではU18W杯の優勝に貢献した遊撃手・山田脩也主将(3年)、最速151キロ左腕・仁田陽翔投手(3年)は既にプロ志望届を提出済み。


 【支配下指名はなるか】

 2人は支配下指名を受けなければ、社会人野球、大学野球に進む見込み。山田は3度目経験した甲子園大会、国際大会で三拍子そろった遊撃手であることを実証済み。支配下指名が有力視されている。一方、仁田は最速151キロと高校生左腕ではトップクラスの馬力を備えるも、今春の選抜、今夏の甲子園では制球の安定感を欠き、アピール不足だった。


 【国体がプロ入りへのラストチャンス】

 仙台育英は右腕・湯田、高橋の2人が軸だった。そのため、公式戦で仁田の投げたイニングはわずかだった。9日から開幕した鹿児島国体が高校最後の公式戦。仁田は2試合とも登板する機会を与えられた。

 【スカウトは来た、見た、撮った、絶賛した】

 9日の慶応戦ではコールド勝利で最終回となった7回に登板し、3者凡退で1三振。自己最速まで1キロに迫る150キロをマーク。そして何より、制球が安定していた。今夏の甲子園準々決勝の花巻東戦(岩手)戦では1回2/3を無失点ながら4四死球と大荒れ。打者の頭の上に投じることもあった。だが、鹿児島の「ニュー仁田」は安定していた。捕手のミットがストライクゾーンの中で動く。試合後、本人に制球力アップの理由を尋ねると「フォームのトップが決まるようになった」。仁田が登板すると、ネット裏に5球団のスカウトが移動した。スピードガンを構え、ビデオを撮影。鹿児島は仁田の最終試験場であることは明らかだった。オリックス・牧野塁スカウトは「かなりよかったと思います。大事に投げていましたね。まとまっている割には出力も高い。150キロも出ましたね。左ピッチャーであれだけ出力を出せる投手はいない。彼の魅力ですよ」と高評価した。

 【高校ラストゲームでもスカウトはいた】

 11日の北海との準決勝では4回途中から救援し、2回2/3を4安打3失点。3四球を与えたが、打者と勝負し、粘られた末の結果だった。以前のように打者が困惑するような荒れたボールはなかった。6回に2本の適時打を許してこの回限りで降板。それでも仁田の表情は晴れやかだった。投手は打たれてナンボ。やっと、やっと、ようやく自分のフォームを取り戻した。これから己ではなく「打者と勝負」する道が始まる。この試合では4度も150キロをたたき出した。パリーグの某球団スカウトはその姿を映像に残していた。

 【▼仁田話(1) 木村が投げたことが一番うれしい】

 2校優勝が決まった試合後の会見で仁田は言った。

 「最後は結果的に3失点なんですけど、出せるものを出して、しっかりやりきれた。今までにないピッチングだっと思います。課題を整理して今後につなげていきたい。最後の大会で優勝できたのもうれしいんですけど、みんが出たことが一番うれしい。みんなが出てしっかり3年間積み上げてきたものを発揮できた。(今春、今夏の甲子園ではベンチ入りしなかった木村が投げたことが)自分としては一番うれしかった」

 【▼仁田話(2) 仙台育英での3年間】

 「(岩手から仙台に越境入学)ここだから得られるものがたくさんあった。本当に来てよかったと思います。(一番の思い出は)いまこの瞬間が一番。本当に最後なので」

 【▼仁田話(3) 10月26日のドラフトに向けて】

 「気持ちは変わらない。しっかり現実を受け止めたい。指名されたら今まで以上の努力で活躍できるように頑張りたい。指名漏れしても大学でしっかりやろうと思います」

 【▼須江航監督話 これからの仁田に期待すること】

 最後のチャンスで実力の片りんを示した仁田。須江監督は今後に期待した。

 「ある施設でフィジカルの数字の1つがプロ選手も含めてトップだった。その潜在能力はまだ眠っていて、まださまざまな部分に鍛える余地がある。本当に160キロぐらいまで出る可能性は十分に秘めています」


 【10月26日が運命のドラフト会議】

 鹿児島国体で仁田は高校野球最後の公式戦を終えた。支配下指名をかなえるためには、最後に示したポテンシャルがどこまでプロ球団に評価されるか、に懸かっている。プロの世界で、大谷翔平、藤浪晋太郎、千賀滉大の球道を球審として目に焼き付けた経験のある私は、仁田がプロの世界で成功する逸材だと信じて疑わない。(元NPB審判員、アマチュア野球担当・柳内 遼平)

 ◇仁田 陽翔(にた・はると)2005年(平17)6月10日生まれ、岩手県大船渡市出身の18歳。猪川小3年から猪川野球クラブで野球を始め、大船渡一中では軟式野球部に所属。仙台育英では1年春からベンチ入り。憧れの選手はロッテ・佐々木朗。1メートル75、74キロ。左投げ左打ち。

 ◇柳内 遼平(やなぎうち・りょうへい)1990年(平2)9月20日生まれ、福岡県福津市出身の33歳。光陵(福岡)では外野手としてプレー。四国IL審判員を経て11~16年にNPB審判員。2軍戦では毎年100試合以上に出場、1軍初出場は15年9月28日のオリックス―楽天戦(京セラドーム)。16年限りで退職し、公務員を経て20年スポニチ入社。同年途中からアマチュア野球担当。

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