【菊地選手の「隠し玉」発掘】聖カタリナ学園・河内 まるで漫画!うなり上げる火の玉ストレート

[ 2023年10月12日 05:10 ]

聖カタリナ学園の河内康介投手
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 ドラフトは、この選手にも注目――。10・26のドラフト会議を待つのは、上位指名候補選手ばかりではない。中央球界では無名ながら、その素質と将来性でNPB入りを狙うことができる「金の卵」が全国に多く存在する。昨年に続くフリーライターの菊地選手(41)が全国を駆け回り“発掘”した「隠し玉」紹介の第1回は、聖カタリナ学園(愛媛)の河内康介投手(18)だ。

 この投手のボールを見てから、数日間は余韻が消えなかった。バランスよく、しなやかなアクションで最後は「パチッ」と音が聞こえそうなリリース。指にかかったストレートは、漫画のようにホップして捕手のミットを突き上げる。2年生捕手の香川清孝は「ミットを縦に使わないと捕れない」と恐怖を口にした。

 最速150キロの数字以上に威力を感じる球筋は、ストレート一本やりで強打者をねじ伏せた藤川球児さん(元阪神など)をほうふつさせる。だが、本人は「自分では見えないので、よく分からないです」と無自覚のようだ。すでに全12球団が調査書を求めている河内だが、今春までは実績は皆無。球速も最速141キロで「大学からプロを目指そう」と考えていたという。だが、春以降に川中大輔コーチからロスなくボールに力を伝える体の使い方を学ぶと急成長。徳島商との練習試合では、のちに甲子園でブレークする森煌誠(3年)と互角に投げ合い、森煌目当てに訪れたスカウト陣をくぎ付けにした。今夏は愛媛大会ベスト4に進出している。夏の大会後も進化は続き、ストレートの軌道から小さく落ちるスプリットにも手応えを得ている。

 ボールの素晴らしさばかりを強調してしまうが、本人が目指す投手像は「山本由伸さん(オリックス)のように負けない投手」。いくら高球質のボールを投げられても、試合に勝てなければ無意味と考えている。社会人の名門・プリンスホテルで活躍した浮田宏行監督も「性格のいい子ですが、負けず嫌いのハートは投手向き」と太鼓判を押す。

 どう考えても、もっと騒がれていい逸材だ。ドラフト会議ではサプライズ上位指名の可能性も十分あるだろう。中学1年時から「吉田輝星(日本ハム)に似ている」と言われてきた顔に笑みが広がる日は、そう遠くない。

 ◇河内 康介(かわち・こうすけ)2005年(平17)4月16日生まれ、大阪府出身の18歳。中学では硬式クラブ「ニュー・ヤンキース」に所属し、高校から愛媛へ越境入学。聖カタリナ学園では1年秋からベンチ入り。2年夏、秋は不祥事で不出場。今春以降に急成長を見せ、今夏は最速150キロを計測して注目された。1メートル80、72キロ。右投げ右打ち。

 ◇菊地選手(きくちせんしゅ)1982年(昭57)生まれ。本名・菊地高弘。雑誌「野球小僧」「野球太郎」の編集部員を経て、15年4月からフリーライターに。ドラフト候補の取材をメインに活動し、ツイッター(現X)上で「大谷翔平」とツイートした最初の人物(10年10月8日)。野球部員の生態を分析する「野球部研究家」としても活動しつつ、さまざまな媒体で選手視点からの記事を寄稿している。著書にあるある本の元祖「野球部あるある」(集英社)などがある。Xアカウント:@kikuchiplayer

 ≪著書「下剋上球児…」が日曜劇場に≫菊地選手こと菊地高弘氏は19年3月に著書「下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル」を出版。TBS系の日曜劇場で今月15日からスタートする鈴木亮平主演のドラマ「下剋上球児」の原案となった。高校野球を通じ家庭、地域、教育が抱える問題や愛を描いた作品となっている。

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