代替出場の近江が滋賀県勢初の決勝進出 エース山田は痛み耐え4試合連続完投「譲る気持ちはなかった」

[ 2022年3月31日 05:30 ]

第94回選抜高校野球大会第10日第1試合・準決勝   近江5-2浦和学院 ( 2022年3月30日    甲子園 )

<近江・浦和学院>延長11回、雄叫びを上げながら力投する近江・山田(撮影・北條 貴史)
Photo By スポニチ

 準決勝2試合が行われ、近江(滋賀)と大阪桐蔭が決勝に駒を進めた。近江は代替出場から史上初で、県勢初にもなる決勝進出で、大阪桐蔭は3度目の優勝を果たした18年以来4年ぶり。近畿勢同士の決勝は18年の大阪桐蔭―智弁和歌山以来となった。近江は延長11回、大橋大翔(3年)が準決勝では32年ぶりのサヨナラ3ランを放ち、浦和学院(埼玉)を下した。山田陽翔は痛みに耐えて2失点完投した。

 その瞬間だけは、痛みを忘れた。滋賀県勢初のサヨナラ弾。エース・山田陽翔が痛みに耐え、170球で4試合連続の完投。校歌を歌い終えるとともに三塁側アルプスへとダッシュする仲間に、付いていくことも不可能だった。左足をひきずる姿に、スタンドから改めて拍手が起こる。魂の投球だった。

 「痛みはあります。でもエースで4番、キャプテンだという自覚はあります。自分が折れちゃいけないと思った。マウンドを譲る気持ちはなかったです」

 アクシデントが襲ったのは、5回2死一、二塁での打席だった。左くるぶし付近への死球。倒れ込んだ山田は痛みに顔をゆがめ、立ち上がれなかった。それでも6回以降も、エースは再びマウンドに向かった。痛む足を引きずり、その足で踏み込んで投げ続けた。

 患部は紫色に変色。試合中に大会ドクターによる手当てを6度も受けた。アイシングをしてテーピングで固定。「彼をマウンドから降ろせるのは私しかいない。決断をしないといけない」と葛藤を抱えた多賀章仁監督に、山田は無失点に抑える快投で応えた。死球後は6イニングを2安打。8回の135球目で、この日最速145キロだ。「こんなに涙が止まらない試合になるなんて」と指揮官は試合後も涙を何度も流した。

 「日本一にあと1勝まで来た。一丸となって戦うだけ。投げられるのであれば投げたいです」

 星稜・松井秀喜の5連続敬遠の年、92年夏に東邦(愛知)で4強入りした父・斉さん(46)を超え、兄・優太(日体大3年)の母校・大阪桐蔭と戦う決勝戦。昨夏2回戦でも先発で4失点しながら、逆転勝利を果たした。試合後は父も付き添い、西宮市内の病院で患部を検査。骨に異常はなく、「左足関節外果部の打撲症」と診断された。投球可能な球数は残り116球。「滋賀に優勝旗を持ってくる」が近江に進学した最大の理由。仲間を信じて投げる決意だ。(鈴木 光)

 ◇山田 陽翔(やまだ・はると)2004年(平16)5月9日、滋賀県栗東市出身の17歳。治田西小1年から野球を始め、捕手。近江では1年夏の独自大会からベンチ入りし、同秋からエース。2年夏の甲子園4強。最速148キロ。1メートル75、77キロ。右投げ右打ち。

 《滋賀勢決勝進出は春夏とも近江》滋賀県勢の選抜決勝進出は初。春夏通じても01年夏の近江以来2度目。

続きを表示

この記事のフォト

2022年3月31日のニュース