エースで4番で主将の近江・山田 思いは仲間のため、京都国際のため

[ 2022年3月31日 05:30 ]

第94回選抜高校野球大会第10日第1試合・準決勝   近江5ー2浦和学院 ( 2022年3月30日    甲子園 )

<近江・浦和学院>5回2死一、二塁、左足に死球を受け、顔をゆがめて倒れ込む近江・山田(撮影・北條 貴史)
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 【秋村誠人の聖地誠論】何という精神力だろうか。死球を受けた左足の痛みは相当だったはずだ。でも、耐え抜いた。それは自分のためではない。近江(滋賀)のエース・山田陽翔(3年)の姿には、人のために尽くす熱い思いを感じた。

 「人間は窮地に追い込まれると本質が出るもんなんや」。そう語ったのは名将・野村克也氏だ。5回に死球を受けた左足をかばっての投球。打者がバントの構えを見せても、マウンドから駆け降りられない。そんな窮地でも全力を尽くす。エースで4番で主将。その責任感以上に、山田を駆り立てるものがあったのではないか。仲間のために、出場辞退となった京都国際のために、という思いだ。「自分が折れちゃいけないと思った」という言葉に、山田の本質が見えた気がする。

 2―2の10回1死一塁。当たり損ねの二ゴロで併殺を阻止しようと必死で走った。その姿を見て思い出したのが、11年夏の甲子園の花巻東(岩手)の2年生エース・大谷翔平(現エンゼルス)だ。左足を痛めて全力投球ができない状態で、強打の帝京(東東京)相手に力投。打っても強烈な安打を放った。そこにあるのは、たとえどんな状況にあっても自分ができることをやり尽くそうとするひたむきな思いだ。自分のためではない。チームのためだった。

 人間は自分のためには妥協が入りやすいものだが、誰かのためなら頑張れる。そして、そういう思いは伝わっていく。バックが無失策で支え、11回の裏。捕手・大橋大翔(3年)の劇的なサヨナラ3ランもまた「山田のために」という思いから生まれたものだ。

 31日、運命の決勝。左足の状態、球数制限もある。それでも山田がマウンドに上がるなら、大阪桐蔭にどう立ち向かうかしっかり見届けたい。(専門委員)

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2022年3月31日のニュース