池田 逆転サヨナラ!92年夏以来の校歌 伝統“攻めダルマ”が突破口に

[ 2014年3月23日 05:30 ]

<池田・海南>手拍子とともに池田の校歌が甲子園に響き渡る

第86回選抜高校野球大会1回戦 池田4―3海南

(3月22日 甲子園)
 懐かしい校歌が22年ぶりに聖地に響き渡った。甲子園通算3度優勝の池田(徳島)は、ともに27年ぶりの出場となった海南(和歌山)に4―3で劇的な逆転サヨナラ勝ち。かつての「やまびこ打線」の面影はないが、粘り強く戦い、7回まで1安打に抑えられた劣勢をはね返した。01年に他界した天国の故蔦文也元監督に92年夏以来の甲子園勝利を届け、応援に駆けつけた「レジェンドOB」たちも感涙した。

 銀傘に響いた金属音は地鳴りのような歓声にかき消された。1点を追う9回無死満塁。7番・林が1ボールからの2球目を叩きつけた打球は、遊撃手の横をすり抜けて中前へ。三塁走者に続き、二塁走者の木村も本塁へ滑り込んだ。サヨナラだ。春に限れば27年ぶりの1勝。4万4000観衆が詰めかけた聖地で、観客の手拍子とともに校歌の大合唱が始まった。

 「池高 池高 おお われらが 池高」

 試合後、岡田監督の唇はかすかに震えていた。「あの校歌を聞くと、ジーンときました。長かったな~。これを夢見てやってきました。いろんな思いが巡ってきました。蔦先生をはじめ、いろんな方が支えてくれました」。79年夏の準優勝時の主将で、10年春に母校の監督に復帰した指揮官は感謝を口にした。7回まで1安打に抑えられながら、終盤の2イニングで驚異的な粘り強さを発揮。何か、見えない力が働いているようだった。

 「攻めるんじゃ」――。天国にいる故蔦文也監督の声が届いた。1点差の9回、先頭の4番・岡本が右前打。セオリーならバントだ。だが、続く木村には迷わず「打て」のサインを出した。「打って失敗したら仕方がない。イチかバチかでした」と岡田監督。「攻めダルマ」と称された恩師をほうふつさせる強攻策は、併殺かと思われた遊撃手の失策を誘い、サヨナラへの突破口を開いた。

 水野、江上らを擁し、82年夏と83年春に甲子園で2季連続優勝。当時「やまびこ打線」と形容されたような強打者は現チームにはいないが、昨秋から打撃を徹底的に強化。各打者がファーストストライクを積極的に狙った。8安打中、長打は1本だけ。劇的な一打を放った1メートル65の小兵・林は「プチやまびこ打線でいけると思っていた。昔は昔で今は今。新しい池田のスタイルを見せたい。自分たちの時代をつくり上げる」と胸を張った。

 現在の部員は強い池田を知らない。92年夏の最後の甲子園出場から4年後に生まれた世代だ。しかし、伝統や精神は確実に受け継がれている。9回に2点を入れてのサヨナラ勝ちは、偶然にも前回勝利の92年夏の3回戦・神港学園戦と同じだった。岡本は「池田に来て良かった。こんなにファンに愛されるチームはない」としみじみ話した。故蔦監督が「大海」と表現した甲子園。山あいの子供たちは存分に暴れ回った。

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