上水研一朗氏 本格化した田中志歩、不利な場面での細かい技術が飛躍的進歩

[ 2022年4月3日 05:30 ]

柔道 全日本選抜体重別選手権第1日 ( 2022年4月2日    福岡国際センター )

<全日本選抜柔道体重別選手権>女子70キロ級で寺田(右)を破り優勝した田中
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 【上水研一朗の目】70キロ級を制した田中志歩は皇后杯を勝ったことで、一段と自信を付けたように見えた。元々身体能力が高い選手だが、海外でも勝ち(2月のグランドスラム・テルアビブ大会)、いよいよ本格化した感がある。

 技術面で飛躍的に進歩したのが、不利な場面での細かい技術だ。決勝では得意な相手とはいえない寺田との対戦で、組み負けて不利な体勢になっても、担ぎ技や肩車で相手の懐にもぐり、状況を打開した。以前は試合運びが単調になっていたが、大野との準決勝でも我慢して勝てるようになった。皇后杯でも自分よりも大きな相手に担ぎ技や奥襟を叩くことで翻弄(ほんろう)したように、試合運びがうまくなっている。

 あえて課題を挙げれば寝技だが、今大会でパリ五輪へめどの立つ戦いができていた。身長も1メートル70と東京五輪金メダルの新井千鶴と遜色なく、外国選手にも体格負けしない。今後の活躍が楽しみだ。

 4人が出場した東京五輪代表選手だが、トータルで見るとコンディションはまだまだ上がっていない印象だった。そんな中でも持ち前の粘り強さと接近戦での強さを見せた48キロ級の渡名喜、絶対的な寝技の強さを発揮した78キロ級の浜田の2人は五輪代表の矜持(きょうじ)を見せてくれたし、優勝は高く評価できる。いずれにしても男子を含め、今大会だけで五輪代表勢の評価や勢力図を判断するのは時期尚早だろう。(東海大体育学部武道学科教授、男子柔道部監督)

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2022年4月3日のニュース