ZOZOチャンピオンシップ 成功の舞台裏に“カップ切り姫”の存在
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日本で開催される唯一の米ツアー競技・ZOZOチャンピオンシップは、日本のエース松山英樹が優勝争いに加わり、大いに盛り上がっている。
そんな白熱した試合を舞台裏で支えているのが、会場のアコーディア習志野CCのコース管理スタッフだ。
同コースでは2年ぶりの開催。前回19年は台風の影響を受け、10番ホールのティーイングラウンドを大幅に前に出すなどのイレギュラーな措置がとられたりしたが、それでも選手の評価は高かった。
全英オープンチャンピオンのコリン・モリカワは「2年前は台風が来てコースが柔らかくなりましたが、それでも素晴らしいコンディションでした」と振り返っている。
今回も練習ラウンドから評判は良かった。
東京五輪金メダリストのザンダー・シャウフェレは「最高のコースコンディションでグリーンも速く、芝は完ぺきに整備されています」と話し、米ツアーの人気選手のリッキー・ファウラーも「距離があってタフなコース。ドライバーショットの精度が重要となり、凄く楽しみ。このコースはあらゆる要素が試される。面白いと同時に厳しいテストになる」と感想を口にしていた。
そうした声に代表されるように、コースが選手にしっかりと認められているのには、理由がある。
アコーディア習志野CCを傘下に置くアコーディア・ゴルフが、米ツアーを運営するPGAツアーと一緒に仕事をするのは、実はこれが4回目。PGAツアーは米シニアツアーも運営しており、17年と19年に日本で米シニアの大会を開催。そのコースが同じアコーディア・ゴルフの成田GCだった。
それ以来、PGAツアーのコース担当者であるデニス・イングラム氏とセッセッティングのコンビを組んできたのが、同社コース管理本部関東第2エリア第4グループエリアコースマネジャーの瀧口悟氏(57)だ。
「デニスさんからは選手の技量を引き出すようなセッティングにしてほしいと常々、言われています。その上でコースの特徴を生かしたセッティングをするように、と。今回で4回目ですから、お互いに意図していることが分かり合ってきた感じです」
瀧口氏によれば、PGAツアーからの要求は、選手のチャレンジ精神を促すものが多いという。
今回のアコーディア習志野CCのグリーン周りの芝は、ホールによってはフェアウェーと同じ長さにカットされている。全てのホールのグリーン周りを同じようなラフにするのではなく、短いところも作ることで、アプローチで転がしたり、上げたりとさまざまテクニックを選手が繰り出しやすいようにコースを多彩な形に仕上げているのだ。
またフェアウエーのつくり方も常にホールの真ん中に位置させるのではなく、少し右に寄せたり、左に寄せたりと変化をつけている。そうすることにより「たとえばフェアウェーが右サイドに少し寄っている方がグリーンを狙いやすくなったりします。選手がいいティーショットを打てばちゃんとご褒美がある状態にしています」と説明する。
さらに瀧口氏がデニス氏と話し合って驚いたのが、池の周りのラフをフェアウェーと同じ長さにカットするように指示を受けたことだった。
「日本では池の周りはラフだったりしますが、彼からは“選手がチャレンジをして池越えを狙い、そこを越えたのにボールが止まったのがラフだったら、チャレンジの意味がなくなってしまう”と言われたんです。トライして成功したのであれば、それに報いてあげようというのが彼らの考え方。だから試合が面白くなるんだと思います」
その理念は今回の4番と6番のドッグレッグホールに生かされた。4番は505ヤードの長いパー4。6番は大きく右に曲がる587ヤードのパー5。いずれも大きな池が絡むタフなホールで、選手の技量とチャレンジ魂が試される、見どころ満点のホールとなっている。
そしてもう一人、大舞台の“演出者”として欠かせない“ピース”になっているのが、カップ切り担当の尾崎めいさん(31)だ。
尾崎さんは琉球大農学部を卒業してアコーディア・ゴルフに入社。配属された成田GCで、繊細でていねいな仕事ぶりを瀧口氏に認められ、入社4年目に米シニアツアー、JAL選手権の“カップ切り担当”に抜擢(ばってき)された。
カップ切りとはグリーンの定められたポイントに直径10・8センチ、深さ25センチの穴を掘ってカップをはめ込む作業。
一見すると簡単そうに思えるが、グリーンの芝下の土や砂の状態、傾斜によって1ミリ単位で高さが変わらないようにしなければならない繊細な仕事。しかもカップに刺したピンは垂直に立つように整えなければならない。それを18ホール、4日間寸分のくるいもなくやってのけなければならない。
「土の状態によってはカップが浮いたり、沈んだりして芝の高さが均一にならなくなります。そうするとグリーン全体の芝を刈るときに、本来なら芝の葉の先だけをカットしなければならないのに、カップの周辺だけは葉の根元近くまで切ることになって、そこだけ均一でなくなってしまうんです」と尾崎さんは説明する。
また、カップを傾斜に切る場合、その傾きに合わせて角度を調整しピンを垂直に立たせるのは、まさに至難の業。1度切ったカップは別の場所に切り直すことができないため、1発で終わらせないといけない。まさに「失敗できない」(尾崎さん)重大な任務なのだ。
そんな職人技の難しい仕事を未経験に近い立場だった彼女は「期待通り、見事にやってくれた」と瀧口さんは明かす。その後、尾崎さんは19年のJAL選手権、同年のZOZOチャンピオンシップでも“カップ切り姫”として力を発揮。その能力を米ツアーの担当者にも評価され、今夏の東京五輪のコース担当責任者でもあったデニス氏から、五輪コースの霞ケ関CCのカップ切り担当として招へいを受けた。そして、そこでも期待通りの働きをやってのけた。
アコーディア・ゴルフには全国に1590人のコース管理スタッフがいるが、女性のカップ切り担当者は非常に珍しいという。
今回のZOZOチャンピオンシップには全国から130人のスタッフが集められている。
ゴルフファンが注目するビッグイベントはそうした“縁の下の力持ち”によって支えられている。
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