車いすテニス・大谷桃子の指導は「天命かな」 ともに“初心者”ゼロから歩んだ古賀雅博コーチ

[ 2021年9月1日 05:30 ]

20年全仏オープン準優勝のシャーレとともに古賀コーチ(左)と記念撮影する大谷(提供・大谷桃子)
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 【支える人(8)】古賀雅博さん(46)は苦笑いで振り返った。

 「いつの間にか練習するのが当たり前のように持っていかれて」

 車いすテニス女子シングルスで8強に入った大谷桃子(26=かんぽ生命)と初めて会ったのは16年の夏だった。

 佐賀市でテニスショップを経営しながらコーチをしていると、車いす競技を始めた元インターハイ選手を紹介された。車いす選手を教えた経験はなく「自信がないものでお金を取るのは…」と何回も断った。しかし「困っているんだろうな」と一度だけ練習に付き合うと、直後の大会で大谷は準優勝。その後も指導を頼まれ、根負けしてコーチになった。

 車いすの競技歴が浅い選手と指導歴がないコーチ。一緒に動画を見て練習法を考えた。古賀コーチはつてをたどって第一人者の上地結衣を教える千川理光コーチの助言を受け、面識ができた選手から古くなった競技用車いすを譲り受けた。「自分で乗ってもいないのに“こう漕(こ)げ”とは言えない」。感覚が共有できないことにもどかしさを感じることがあった大谷は「お互いに歩み寄れた」と振り返る。信頼は深まった。

 実は結成1カ月でコンビ解消の危機があった。大谷の活躍が日本協会の目に留まり、強化指定に道が開けた。指導態勢などヒアリングを受けた古賀コーチは「経験豊富な方に任せた方がプラスでは」と考えた。大谷も他コーチの指導を体験したが「引き続き教えてほしい」が結論。古賀コーチは「天命かな」と感じたという。3学年上の兄・健太郎さん(48)に知的障がいがあり、幼い頃から支える側にいた。「そういう役割なのかな」。大谷は古賀コーチを「家族のよう」と信頼している。

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2021年9月1日のニュース