【卓球】協会の努力結実 人、組織、環境に惜しまず投資

[ 2021年8月9日 05:30 ]

混合ダブルスで金メダルを獲得した水谷、伊藤
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 【本紙担当記者が分析】日本オリンピック委員会(JOC)が掲げた「金メダル30個」にはわずかに届かなかったものの、史上最多27個の金メダルを獲得し、銀14、銅17を合わせた総数58個でも過去最多を上回った東京五輪の日本選手団。57年ぶりの地元五輪は競技間で明暗がはっきり分かれたのも特徴だった。その理由について担当記者が分析した。

 資金があれば強化の道ができる。混合複で金、団体で男子銅で女子が銀、個人女子で伊藤美誠が銅メダルを獲得した卓球は、日本協会がやり手だった。宮崎義仁強化本部長がプレゼンの鬼になって国の助成金を獲得。消滅危機だった「エリートアカデミー」に資金を投下し、中国人練習パートナーを雇うなどてこ入れをした。この育成機関から、平野美宇と張本智和が育った。

 17年以降は情報部隊を世界最多の4人態勢にした。国際大会で撮りためた映像は3万試合近く。選手や監督の「この選手のサーブだけを集めて」などの要望を受けて編集。データベースに上げて、各自が端末で閲覧できるシステムも作った。女子の馬場美香監督は、団体戦で新しいダブルスの組み合わせが出てきた際に活用。銀メダルの下支えになった。

 男子は10年に初めて専属のトレーニングコーチを雇った。それ以前はウオーミングアップの文化すらなかったという。筋トレは、ドイツ留学をした水谷隼は熱心だったが、他は怪しかった。丹羽孝希は腕立て伏せができなかったとされている。現在、代表クラスは個別でトレーニングメニューが与えられ、データを日々、担当者に送らなければならない。水谷は語る。「05年に世界選手権に初めて出た時はワースト記録を作るくらい男子は弱かった。NTC(ナショナルトレーニングセンター)ができて、たくさん合宿もできるようになって、ようやく世界で戦える環境ができた」。資金を人に、組織に、環境に投資し、男女ともメダル確実種目になった。(倉世古 洋平)

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2021年8月9日のニュース