ラグビーの外国人選手が帰国しない理由とは
万事が新型コロナウイルスに翻弄(ほんろう)された2020年。年の瀬に第3波が襲来し、12月28日には外国人の新規入国が一時停止となった。緊急事態宣言下の春よりも街中の人出は多いが、1年前は珍しくなかった外国人観光客の姿は、ほぼ皆無と言っていい。一方、おのおのの理由で日本にとどまり続けた外国人もいる。
ラグビー界で日本にとどまり続けた外国人にも、それぞれに理由があった。妻が日本人など、生活の拠点が日本に根ざしている選手もその一例だが、そうした事情がないものの、不安な情勢下で日本にとどまり続けた選手たちも一定数いた。その理由が「国籍主義」ではなく、「協会主義」で代表資格が決まるラグビー界のルールにある。
国際統括団体ワールドラグビー(WR)は、規定第8条で代表資格を定める。「当該国での出生」「両親か祖父母の1人が当該国で出生」の2条件に続くのが、「プレーする時点の直前の36カ月間継続して当該国を居住地としていた」というもの。現在に至るまで、外国出身選手のほぼ全員がこの3つ目の条件を満たして紅白の段柄ジャージーに袖を通している。この条件は20年12月31日、つまり今日を最後に60カ月に延長される予定だったが、世界的な新型コロナの流行により、改定が1年延期されることが決まっている。
昨年、31人のW杯日本代表入りを勝ち取ったピーター・ラブスカフニとジェームス・ムーアの2人は、7月27日のフィジー戦を前に居住条件を満たし、この試合で初キャップを獲得した。その一方でFW第3列からCTBにコンバートされ、その突破力を武器に最終メンバー入りを狙っていたラーボニ・ウォーレンボスアヤコは、宮崎合宿中の7月中旬になって、条件を満たさないことが発覚した。突然それを知らされ、合宿地を去ったボニーの寂しそうな後ろ姿は忘れられない。
2月で打ち切られたトップリーグ(TL)の20年シーズン、出色の活躍を見せた選手がいる。パナソニックのCTBディラン・ライリー。13番を付けて全6試合に先発。自身で残した3トライという記録以上に、力強い縦突破でディフェンスラインにくさびを打ち込み、決定機を演出する仕事ぶりが目を引いた。6試合中5試合で12番を付けて相棒を務めたのが南アフリカ代表のダミアン・デアレンデだったが、誇張ではなく、全く見劣らないハードワークとエナジーを見せ続けた。彼もまた、春から夏、秋、冬と季節が移ろいでいく中でも、日本にとどまり続けていた外国人選手の一人だ。
生まれはスーパーラグビーのシャークスが本拠地を置く南アフリカのダーバン。本人いわく、「地区のルール」で高校生までラグビーをできないことになっており、クリケットやホッケー、水泳に打ち込む少年時代を過ごした。10歳の時、両親の仕事のために、一家そろってオーストラリアに移住。11歳の時、南ア時代から「ずっとやろうと思っていた」というラグビーを始めた。
「オーストラリアではチャンスがなかった」。トッププレーヤーの多くが高校卒業から直接プロチームやその下部組織に入るオーストラリアにあって、ライリーはその努力実らず、大学でラグビーを続けることになった。そんな時、高校時代の対戦校にいた選手の1人が日本に渡り、プロ契約を獲得したことを知る。タイ国籍を持ち、オーストラリアで育ったベン・ガンター。16年10月の公式戦初出場でTL最年少出場記録を樹立し、すぐに1桁台の背番号に定着した。日本にはチャンスがある。居ても立ってもいられなくなったライリーは、すぐに行動に移した。自身のプレー集をDVDにまとめ、エージェントを通じて日本の各チームにアプローチ。その一つがパナソニックだった。翌17年5月ごろ、入団テストのために来日。晴れて合格となり、大学中退を決めた。
パナソニックから日本協会を通じてメディアに契約が発表されたのは、18年6月だった。だが本人は「17年11月に契約し、12月に来日した」と述懐する。この絶妙なタイミングに、飯島均ゼネラルマネジャーの思惑があり、親心があった。18年の来日なら、当時の条件下で日本の代表資格を得られるのは60カ月の継続居住が満たされる23年。一方で17年12月31日までに来日すれば、36カ月で資格を得られる。当時、一介の大学生だったライリーの可能性をどこまで感じていたのかは不明ながら、かの6試合でのライリーの活躍ぶりを思えば、同氏の先見の明は明白だ。
「もちろんコロナで地元に帰りたいと思うことがあったが、このチームにはたくさんの仲間たちがいて、ポジティブな気持ちを保つことができた。私は大きなゴールを設定している。外的な要因があっても、一定の犠牲を払う覚悟はしていた」。ゴールの内容を具体的に聞くと、ライリーは「最初はトップリーグデビューだった。その後は先発のセンターになること。そして優勝したい。その先に、いつか代表のジャージーを着てプレーするという目標がある」と答えた。誠実さと、奥ゆかしさを感じさせる回答だ。
おそらくこの3年間、代表資格を満たすため、日本国外に出る慎重に過ごしてきたはずだ。そして年が明ければ、1月16日に新シーズン開幕が控える。パナソニックの初戦は、翌17日のNEC戦。6月末から始まる代表キャンペーンに向け、フラットな状態からスコッド争いが始まる。ライリーもまた、大願をかなえんと、ハードワークを続けるだろう。(記者コラム・阿部 令)
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