松島が道になる!大畑大介氏 ラグビー最高峰・仏1部リーグ挑戦“後輩”の成功確信3要素

[ 2020年9月5日 05:30 ]

クレルモンの紅白戦でプレーする松島。大畑氏が仏リーグでの活躍に太鼓判を押した
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 ラグビーのフランス1部リーグは4日(日本時間5日)に開幕。日本代表FB松島幸太朗(27)が新加入したクレルモンは6日(同7日)の初戦でトゥールーズと対戦する。テストマッチ通算69トライの世界記録を持ち、02年にクレルモンでプレーした経験のある大畑大介氏(44)は松島の活躍を断言。理由として(1)「福岡+レメキ」の総合力(2)豊富な海外経験(3)コミュニケーション力、を挙げた。

 世界のトップ選手が集い、北半球最高峰と言われるフランスリーグで日本人選手が活躍するのは決して容易なことではありません。私は2003年W杯の前年となる02年にクレルモンでプレーしましたが、正式契約には至りませんでした。時代背景や環境、チャレンジへの過程などが当時と異なるので単純に比較できませんが、松島選手は十二分に活躍できるとみています。

 昨年のW杯開幕戦のロシア戦でハットトリック(3トライ)を決めたように、松島選手は過去の日本人バックス、特にアウトサイドプレーヤーの中で間違いなく歴代No・1の選手と断言できます。昨年の日本代表WTBで言えば、福岡選手はスピード、レメキ選手はパワーと特長がありましたが、松島選手はその両方を備えています。移籍後、体重も約5キロ増えたと聞きます。仏リーグの激しい肉弾戦に対応できます。

 ボディーコントロールやボディーバランスも一級品です。特筆すべきはスピードの切り替え。相手選手との間合いを取るのが非常にうまく、緩急のつけ方も抜群です。少々ぶつかられてもバランスを崩すことなく走り切ることができるし、ハイボールにも強い。チャンスメークからフィニッシュまで「何でもござれ」の万能タイプです。

 また、私や16年にトゥーロンでプレーした五郎丸選手(ヤマハ発動機)を含め、過去にフランスでプレーした選手との決定的な違いは、経験値の高さです。松島選手は高校卒業後に南アフリカへ渡り、オーストラリアでもスーパーラグビーで経験を積みました。今回が初めての海外ではなく、若い時から可能性を探り、挑戦を重ねてきました。これまでの日本人選手とは全く異なるアプローチです。

 言葉の問題も、ほぼないでしょう。フランスは南半球の選手も数多く、英語ならば問題なくコミュニケーションが取れる。クレルモンフェランは人口20万人に満たない田舎ですが、ラグビー熱は高く、ファンは熱狂的です。町の至る所でファーストカラーの黄色と青色にあふれ、さながら阪神タイガースのよう。連係さえうまくいけば、チームに欠かせない存在になるでしょう。後に続く選手に一つの道筋をつくってほしいし、それができる選手だと思います。(元日本代表)

 ▽フランス1部リーグ「TOP14」 欧州を代表するリーグの一つで、起源は1892年にさかのぼる。シーズンは例年8月(今年は9月)から翌年6月までで、レギュラーシーズンは14チームがホーム&アウェー方式で26試合を戦い、上位6チームがプレーオフに進む。興行的に世界で最も成功しているリーグと言われ、シーズン総観客動員は10シーズン以上も250万人を超えており、選手年俸も世界最高レベル。最多優勝はトゥールーズの20回。

 ▽クレルモン フランス中央部クレルモンフェランを本拠地とするクラブで、1911年に現在も同地に本社を構えるタイヤメーカー「ミシュラン」の創業者一族によって創設。優勝2回、準優勝12回を誇り、18~19年シーズンも準優勝。本拠スタジアムはマルセル・ミシュラン・スタジアムで収容1万9372人。チームカラーは黄と青で、ファーストジャージーは黄色。監督は元バックスでフランス人のフランク・アゼマ氏(49)。

 ≪W杯から1年 新天地 医師の夢 それぞれの道≫昨年のW杯日本代表メンバー31人のうち、引退したトンプソン氏を除く30人が今季も現役を続ける。一方で松島以外は国内のトップリーグ(TL)に所属しており、来年1月の新シーズン開幕まで、公式試合がない。

 国内で移籍したのはW杯でWTBとして活躍したレメキ。14年から所属していたホンダを離れ、福岡県を拠点とする宗像サニックスでプレーする。またCTB中村は、これまでの社員からプロ契約に切り替えており、新たな覚悟を持って新シーズンに向かう。

 当初、今夏に開催予定だった東京五輪出場を目指していたWTB福岡は、五輪が1年延期となったことで断念。幼少期からの目標だった医師になるため、来年4月の医学部入学を目指し、受験勉強を行っている。TLでは新シーズンもプレーするが、いつまで現役を続けるかは明言していない。

 日本代表としては今春のテストマッチが全て中止となり、11月に欧州で開催予定の国際大会出場も断念することが決まった。現在は日本協会が別の国際試合を組むなど、活動を模索している。

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