12歳玉井 男子高飛び込み最年少V、東京五輪へ新星出現

[ 2019年4月22日 05:30 ]

飛び込み 日本室内選手権最終日 ( 2019年4月21日    東京辰巳国際水泳場 )

飛び込みの日本室内選手権の男子高飛び込みで優勝し、表彰式で声援に応える玉井
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 世界選手権(7月、韓国・光州)の日本代表選考会を兼ねて行われ、男子高飛び込みで兵庫・高司中学1年の玉井陸斗(12=JSS宝塚)が474・25点でシニアデビュー戦を優勝で飾った。日本水連によると、国内主要大会では史上最年少の優勝。日本水連の定める代表選考基準(432点)を突破したものの、国際水連の規定による年齢制限で世界選手権には出場できないが、20年東京五輪に向けて超新星が出現した。

 最高の締めで、最年少優勝に花を添えた。最終6本目。玉井は5255B(後ろ宙返り2回半2回半ひねりえび型)で91・80点を叩き出した。12人が6本飛ぶ決勝の全72本中の最高得点を記録。474・25点は2位に60・55差をつけるぶっちぎりのV。中学生になりたての12歳は「日本一になれてメチャメチャうれしい。自信になりました」と声変わりしていない声で喜んだ。

 身長1メートル43、体重36キロで、切れのある高速回転が武器。50メートルを7秒フラットで走り、3月まで通っていた小学校では学年で一番速かった。109C(前宙返り4回転半抱え型)など難易度の高い種目構成は世界トップ選手と遜色ない。昨夏から高飛び込み用の10メートルの台で本格的な練習を始め、わずか9カ月足らずで日本一となった。辰巳楓佳コーチ(25)は「109Cを初めて飛んだ時から形になっていた。普通はあり得ない」と目を丸くする。

 尊敬する選手は5回の五輪出場を誇る寺内健(38)。JSS宝塚のチームメートでもあり、踏み切り姿勢など技術面から、脱いだ服を丁寧に畳むなど生活面まで見習っている。寺内は「スピード、筋力、練習に向かう姿勢は既にスーパーアスリート。僕も見習わないといけないところがたくさんある」と評価。「落ち着きすぎていて中学生のキャピキャピ感はないですけどね」と笑った。

 東京が五輪開催地に決まった13年9月7日は6歳だったため「あまり記憶にない」と言う。自国開催の五輪を意識しだしたのは挑戦する種目の難易度が上がった小学5年生の頃。年齢制限により、12位以内で東京五輪出場が内定する世界選手権には出場できないが「それを分かった上で自分のできることをやる。東京五輪は一番の目標。五輪でメダルを獲りたい」と目標はブレない。出場すれば92年バルセロナ五輪競泳で金メダルを獲得した14歳の岩崎恭子を抜いて夏季五輪の日本人最年少記録を樹立する超新星。小さな体に大きな夢が詰まっている。

 ▽五輪と年齢 飛び込みは国際水泳連盟の規定により、五輪、世界選手権、W杯は大会開催年の12月31日時点で14歳に満たない選手は出場できない。今大会の玉井は日本水連が定める選考基準を突破したが、年齢制限により世界選手権代表には選ばれない。20年9月11日に14歳の誕生日を迎えるため、東京五輪の出場は可能だ。日本人の最年少五輪出場は36年ガルミッシュパルテンキルヘン五輪のフィギュアスケートの稲田悦子の12歳で、夏季に限れば92年バルセロナ五輪の競泳200メートル平泳ぎの岩崎恭子の14歳。1896年アテネ五輪の体操競技平行棒団体で10歳で銅メダルを獲得したギリシャのディミトリオス・ロウンドラスが史上最年少出場、最年少メダリストだ。

 ▽飛び込みの五輪への道 個人種目で東京五輪の出場内定を得る方法は(1)7月の世界選手権で決勝進出=12位以内(2)9月のアジア杯で優勝(3)来年4月のW杯東京大会で準決勝進出(18位以内)の3つ。年齢制限により(1)の出場資格のない玉井は(2)(3)のいずれかで、東京五輪を目指すことになる。

 【玉井 陸斗(たまい・りくと)】
 ☆生年月日 2006年(平18)9月11日生まれ。
 ☆出身 兵庫県宝塚市。4月から市立高司中に通う。
 ☆競技歴 小学1年時に開始。3歳から通っていたスイミングスクールの隣のプールで開催されていた飛び込み教室を体験したことが契機となった。入水時に飛沫(しぶき)が立たない“ノースプラッシュ”が快感となり、のめり込む。
 ☆趣味 ゲーム。家でゴロゴロする。寺内いわく「低い声で“一緒に携帯ゲームやりましょう”と言われるが、声がゲームをやるテンションではない」。
 ☆好きな食べ物 焼き肉。特に牛タン。
 ☆サイズ 1メートル43、36キロ。今後、体が大きくなることを想定して、筋力トレなどの体づくりに着手している。

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