選択肢は選手に…池江璃花子と三木二郎コーチ、新時代の師弟関係

[ 2018年7月20日 12:15 ]

池江璃花子の担当コーチになった三木二郎氏
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 今月上旬に行われた競泳の東京都選手権のプールサイドでは池江璃花子と話し合う若い男性指導者の姿があった。5月から新たに池江の担当コーチになった三木二郎氏(35)。現役時代は00年シドニー、04年アテネの2度の五輪に出場した個人メドレーの元トップスイマーだ。

 08年北京五輪代表を逃して引退。その後はミズノの社員として選手のサポートに回っていた。13年9月に20年東京五輪の開催が決まると、「もう一度で五輪にトライしたい」と指導者転身を決意。16年3月からJOCの研修制度を使って、英国に2年間コーチ留学した。池江サイドからコーチ就任を打診されたのは、その英国留学を終えて帰国した直後だった。

 腰が引けてもおかしくない状況だ。池江は今年長水路で計11回の日本記録を更新し、東京五輪では金メダルも狙える日本女子のエース。三木氏にはまだ国内での指導実績がない。日本の宝とも言える逸材をいきなり預かるプレッシャーは計り知れない。だが、三木氏は「周りからは『よく引き受けたね』と言われるけれど、こんなチャンスはないですよ、と思っています」と頼もしい言葉を返す。

 現役時代は「世界で戦う選手と一緒に練習したい」と後に五輪金メダリストになった北島康介がいる東京SCに移籍。名将平井伯昌コーチの薫陶を受けた。加えて、英国での2年間が三木氏にとって大きな財産だ。

 「選手にはどう思う?と常にたずねるようにしています。こっちの言うことは絶対じゃない。選手に選択肢を与えて、自ら考えて行動させる。英国ではそこに一番感銘を受けました」

 英国では選手が毎日のようにコーチの部屋に来て話をしていくという。選手とコーチが日常的に意見をぶつけ合う。互いに納得した上で練習は進んでいく。あらためてコミュニケーションの大切さを学んだ。今、三木氏は池江に「貯めるな」と声がけする。不安や不満を吐き出させながら、一緒に解決法を探っていくように心がけている。上意下達の古い師弟関係からはほど遠い、フラットの関係だ。

 20年東京五輪まで2年。今夏はパンパシフィック選手権(辰巳)、アジア大会(ジャカルタ)が控える。「2人で新しい歴史を作り上げたい。璃花子も『二郎さん、私たちならできます』と言ってくれる」。新時代の師弟関係を結ぶ2人の挑戦は、始まったばかりだ。(柳田 博)

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2018年7月20日のニュース