小平「やっと出た」世界新!冬季五輪個人種目で日本人女子初快挙

[ 2017年12月12日 05:30 ]

スピードスケートW杯第4戦 女子1000メートル ( 2017年12月10日    米ユタ州ソルトレークシティー )

女子1000メートルを1分12秒09の世界新で制し、声援に応える小平奈緒選手
Photo By 共同

 最終日の女子1000メートルで小平奈緒(31=相沢病院)が1分12秒09の世界新記録で優勝した。ブリタニー・ボウ(29=米国)が持つ記録を0秒09塗り替え冬季五輪個人種目で日本人女子初となる世界記録を樹立した。自身の日本記録を0秒42更新し、W杯通算19勝目。同走の高木美帆(23=日体大助手)は1分12秒63で2位だった。

 夢に見た瞬間だった。電光掲示板に世界新が表示されると、目を閉じ、力いっぱい拳を握った。平昌五輪前最後の高速リンクでのレースを、小平が最高の形で締めくくった。優勝しても普段は反省点を並べることが多いが、「これでやっと自信を持って、1000メートルも私の距離だと思えるようになる」と胸を張った。重かった扉をついにこじ開けた。そして、結城匡啓コーチに「やっと出た」と伝えた。

 同走はこの種目今季2戦で2位2回と好調の高木美。邪念を払い「自分に徹する」と集中力を高めた。低く飛び出し、最初の200メートルを17秒34で通過。昨季出した日本記録より0秒22も速かった。氷に吸い付くように加速。理論派の結城コーチが「最後の200メートルは興奮して、電光掲示板しか見ていなかった」と振り返った。心技体が凝縮された1分12秒09を瞬く間に駆け抜けた。世界中の誰も体験したことのない風を、小平は「心地いい」と表現した。

 冬季五輪で実施される女子の個人種目で世界記録を樹立した日本人は、小平が初めてだ。スピードスケートで日本人初の世界記録を出した鈴木恵一氏(75)は「日本の女子スケート界において、とてつもないこと。他の国が弱い、と見えてしまう」と感激。10年バンクーバー五輪で日本選手団総監督として小平を見ており「こんなに急激に成長するとは。ダッシュ力が女性じゃなくなった」と驚きを隠さなかった。

 本命500メートルは前日、高速リンクでのレースが終了。世界新に届かなかったが「自分に必要な、悔しい思いを得ることができた」とバネに変えた。日本一になり、世界に飛び出して12シーズン目。転んでも、思い通りのタイムが出なくても「最速の滑りを極める」と自らを奮い立たせてきた31歳が再び爆発するのは、雪辱を期す3度目の夢舞台だ。

 ▼過去のスピードスケート日本勢の世界記録 1969年に男子500メートルで鈴木恵一が出したのが最初。その後、同種目で清水宏保が96〜01年に4度更新、05年に加藤条治がマークした。男子1000メートルでは94年に宮部保範、96、97年に堀井学が2度樹立。男子1500メートルでは96年に野明弘幸が記録している。女子個人では小平が初めてだが、今季は団体追い抜き(高木美、高木菜、佐藤、菊池)が3レース連続で更新している。

 【日本女子による主な五輪種目の世界記録】

 ☆人見絹枝(陸上)26年8月に走り幅跳びで5メートル50、28年5月には5メートル98。28年5月に100メートル12秒2、29年5月に200メートル24秒7。

 ☆青木まゆみ(競泳)72年7月、100メートルバタフライで1分3秒9、9月に1分3秒3とさらに更新。

 ☆高橋尚子(陸上)01年9月に女子マラソンで2時間19分46秒。

 ☆井上恵(クレー射撃)トラップで88点。

続きを表示

2017年12月12日のニュース