リオデジャネイロ五輪を反面教師にした東京五輪 今やロサンゼルス五輪の反面教師?

[ 2016年12月13日 11:00 ]

NBAレイカーズの本拠地ステイプルズセンター(AP)
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 【高柳昌弥のスポーツ・イン・USA】2020年の夏季五輪開催地に東京が選ばれたとき、その背景にはリオデジャネイロ五輪への不満があったはずだ。経済の低迷、政治腐敗、そして環境汚染。だから次は絶対に信頼がおける都市にしようと…。しかし2024年の開催地に立候補している米国のロサンゼルスは「東京のようにはならない」と訴えて来年9月にペルーのリマで開かれるIOC総会での“当選”をアピールしている。

 開催費用は53億ドル(約6042億円)。テロ対策費は高騰しそうだが、それでも現時点では東京五輪の3割にも満たない額だ。サッカーのメイン競技会場はカレッジ・フットボールでおなじみのローズボウル、バスケットボールはNBAレイカーズとクリッパーズの本拠地でもあるステイプルズ・センター、1932年と84年の過去2度の五輪のメイン会場となったメモリアル・コロシアムもまだ現役だ。選手村はUCLAの学生寮。唯一欠けている競泳の競技会場は南カリフォルニア大の屋外プールをリフォームし、五輪終了後は元に戻すということになっている。

 つまり「新たな施設を造らない」というのが最大の売り。見積もりが甘くどんどん予算が増え、しかもどこで競技を行うかでまだもめている東京とは対極にある五輪構想だ。

 もうひとつの違いは先頭に立つ人物の経歴。商業五輪と呼ばれた84年時にはピーター・ユベロス氏という旅行会社の経営者を抜擢して五輪を黒字にしてみせたが、今回は地元UCLA出身でスポーツの複合エージェント業を営んでいるケイシー・ワッサーマン氏が招致委員会のリーダーとなっている。いわば地元出身のスポーツ専門家。ひとたび“アンテナ”を張れば、瞬く間に必要な情報を入手できる人材だ。

 「それに比べて…」と考えるのはやめておこう。東京五輪も既存の施設を最大限に利用していると考えての判断なのだろう。ただ私はひんぱんに都内のスポーツ施設を利用している人間なので、多くの仲間と同じようにこう思うのである。

 「ここならちょっと手を加えれば五輪のバレーボールができない?」「深さが足りないって言うけど、このプールちょっとどうにかすれば使えない?」「なんかもったいないよね」

 五輪開催に必要な各種要件を満たしているかどうかは正確にはわからないが、弊社がある江東区、スカイツリーで有名な墨田区だけでも立派な体育館がいくつかある。実際、そこでは国際大会が行われているし、周辺にまだスペースが残されている建物もある。1回400~500円の料金を払って実際に中で汗を流してみればすぐにわかることなのだが、なぜか東京五輪は新しくて巨大な施設の方に目が行き「レガシー(遺産)」という名の魔物?を追い求め続けているように見える。

 私の“行きつけ”の体育館は固定の観客席だけで1500あり、フロアにイスを置けば2000~3000人は収容可能。もしリーダーにスポーツ専用のアンテナがあってワンコインを自動券売機に入れて都内の体育館巡りをしていれば「ああ、あそこはこう変えれば使えそう」とか「ここはこの競技は無理だが、あれなら使える」といったアイデアが絶対に湧いてくるはずなのだが、東京ではどこまでも「机上の論理」が優先されるようだ。

 いつのまにか反面教師になってしまった感のある2020年東京五輪。ロサンゼルスのワッサーマン五輪招致委員長は「もしロサンゼルスが選ばれれば、国際オリンピック委員会(IOC)は予算が増えたとか、競技場が変更になったとか、五輪そのものが開催できないのでは?といったことで悩む必要はない」と言い切っている。なのでぜひとも「そんなことはない!」と反論しましょう…ですよね、東京五輪の関係者の皆さん?レガシーって目に見えるものだけじゃないですよね?(専門委員)





 ◆高柳 昌弥(たかやなぎ・まさや)1958年、佐賀県嬉野町生まれ。上智大卒。ゴルフ、プロ野球、五輪、NFL、NBAなどを担当。スーパーボウルや、マイケル・ジョーダン全盛時のNBAファイナルなどを取材。50歳以上のシニア・バスケの全国大会に6年連続で出場。

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