【コラム】金子達仁

相手にサッカーをやる気がないと、もっと早く気付いてほしかった

[ 2021年7月24日 01:00 ]

東京五輪 男子サッカー・1次リーグA組   日本1―0南アフリカ ( 2021年7月22日    味の素スタジアム )

 五輪にせよW杯にせよ、初戦の入り方が簡単でないことはわかっていたつもりだった。

 加えて言うなら、日本の出来が極端に悪かったわけでもない。試合の最終盤まで相手にほとんどシュートを打たせなかったし、終始主導権を握ってもいた。にもかかわらず、1―0という結果と内容に猛烈なストレスというか物足りなさを感じてしまうのは、たぶん、この試合の前にメキシコの戦いぶりを見ていたからである。

 ボール保持を重要視するサッカーという点で、メキシコと日本は同類と言っていい。だが、初戦に限って言うならば、メキシコは飢えた虎であり、日本は怠惰な飼い猫だった。勝利を、ゴールを奪うため、緻密なサッカーに獰猛(どうもう)さをちりばめたのがメキシコだとしたら、穏やかなルーティンを淡々とこなしたのが日本だった。

 直前まで試合ができるかどうか危ぶまれる状態だった南アフリカに、日本とサッカーの質で勝負する気はさらさらなかった。守って守って守りまくり、あわよくばの一撃にかける。歴史的にみても、アジアのチームを相手にここまでの“アンチ・フットボール”をやったチームはなかったのではないか。

 若いメンバーにそこまで期待するのは酷かもしれないが、相手にサッカーをやる気がないことを、日本の選手はもっと敏感に、かつ早い段階で気付いてほしかった。気付いて、ギアをあげるなり、違った何かを加えるなりしてほしかった。

 日本より遥(はる)かに暑い時間帯に、南アフリカより遥かに強い相手と戦っていたメキシコは、後半に入ると明らかにギアをあげた。個人の思いつきではなく、チームとしてギアをあげた。

 だが、日本のギアはメキシコほどにはあがらなかった。いつも以上に我を出し、個人の力で局面を打開しなければと考えていた選手はいたが、チームとして殺気を感じさせるほどではまるでなかった。

 とはいえ、ひょっとするともっとひどい結果になっていてもおかしくなかった試合で、日本は勝ち点3を獲得した。チームを救ったのが久保の一撃だったことも、勢いをつける一助になるかもしれない。

 もっとも、メキシコにしてもフランスにしても、この南アフリカ相手に勝ち点を取りこぼすことはまず考えられない。日本にとっては、次のメキシコとの対戦が悲願へ向けての最初の大一番となる。

 フランスを4―1で粉砕したメキシコは、大会直前に日本がテストマッチで対戦したスペインより、本調子ではなかったスペインより、圧倒的に強い。以前の彼らとは違って高さ、強さ、分厚さもあり、メキシコ国内で「史上最強」とうたわれるのも頷(うなず)ける。日本としては、最高のメンバーが最高のコンディションで臨み、最高のサッカーをやらなければどうしようもない。

 ただ、自分たちのボール保持率に絶対的に自信を持つメキシコを崩すには、日本がボール保持率で彼らを上回るしかない。フランスはそこでの勝負を諦め、結果的に蹂躙(じゅうりん)されてしまったが、どんなに苦しくとも、日本はそこの勝負から逃げてほしくない。

 あと、我慢できないので最後に一言。審判のレベルはその国のサッカーに比例すると言われる。この日の主審はベネズエラ人。申し訳ないが、なるほど、である。(金子達仁氏=スポーツライター)

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