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【コラム】金子達仁

“夢”が“当たり前”に 初出場から28年 W杯の年が幕を開けた

[ 2026年1月1日 12:00 ]

日本代表26年主な日程
Photo By スポニチ

 知らない曲、というわけではなかったが、還暦を迎えるまでヘビーメタル愛を貫くことになる人間にとって、完全に好みの枠からは外れた曲でもあった。

 なのに、涙が出てきた。

 安室奈美恵さんの「CAN YOU CELEBRATE?」がトゥールーズに流れている。ホストカントリーの計らいなのか、W杯本大会の会場で、アルゼンチンのものとおぼしき軽妙なスペイン語の曲に続き、日本語の歌が響いている。ついに、ついに日本はここまで来た。親善試合ではなく、W杯でアルゼンチンと戦うところまで来た。スタンドにはためく無数の日の丸。いまほど緩くはなかったはずの涙腺は、一時的に、いまよりも緩くなってしまった。

 あれから、28年が経(た)った。

 多くの日本人にとって、はるか彼方(かなた)に仰ぎ見る存在だったW杯は、もはや出場するのが当たり前の大会となった。それどころか、サッカーにおける第三世界の勢力としては日本よりも一足早く台頭し、W杯における一定の地位を確立してきた北中米やアフリカ勢よりも声高に、優勝という目標を口にするようになった。

 開幕まで半年という時点で、英国のブックメーカー「ラドブロークス」は日本に66/1というオッズをつけている。日本が優勝すれば、1ポンドが67ポンドになるこの賭け率は、クロアチア、エクアドル、モロッコと並ぶ16番目の数字である。同じ組のオランダは16/1、チュニジアは500/1で、1番人気のスペインは4/1ということになっている。

 決勝進出経験のあるクロアチア、前回大会ベスト4のモロッコと同じオッズがつけられたということは、優勝はともかく、日本が上位進出の有力候補とみなされているのは間違いない。わたしの知る限り、これほどのオッズが日本につけられたことはかつてなかった。

 28年前にアルゼンチンと戦ったのと同じ6月14日(日本時間15日)、日本はダラスでオランダと戦う。28年前、アルゼンチンに勝てると信じていた日本人はほぼ皆無だったが、今回は違う。わたし自身、結果はどうであれ、内容が極めて拮抗(きっこう)したもの、いや、むしろ日本が押し込む展開になるのではという気がしている。敵地でドイツ、トルコを破ったことを考えれば、十分にありえる展開である。

 続く第2戦はチュニジア。前回大会で力が落ちるとされたコスタリカに苦杯を喫したこともあり、今回も苦戦を予想する声が聞かれる。親善試合でブラジルと引き分けたこと、同じ北アフリカの雄モロッコの躍進も、日本人の警戒心を刺激する。

 ただ、前回のW杯はカタールでの開催だった。モロッコにとっては、ホームに等しい国での大会だった。今回は違う。アラブは、ムスリムは、マジョリティーではない。観客からの後押しが期待できない中で、前回同様の躍進が期待できるか。

 02年W杯日韓大会でベスト4に進出した韓国は、4年後、1次リーグで姿を消した。同じことがモロッコに起きても不思議ではないし、チュニジアが置かれた状況はさらに厳しい。日本からすれば、勝ち点3を計算したい試合ではある。

 ただ、おそらくはチュニジアも同じようなことを考えている。前回大会ですでに1次リーグ突破を決めていたフランスに勝つまで、彼らはW杯で欧州勢に一度も勝ったことがなかった。日本を相手に勝ちを計算するのは自然な流れと見る。決戦は第2戦――。

 というわけで、初出場から28年目のワールドカップとなる年が明けた。読者の皆さま、今年もよろしく。(金子達仁=スポーツライター)

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