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【コラム】金子達仁

ジョージアの激闘に感銘 世界のどこでも“いいチーム”は生まれる

[ 2024年6月20日 07:00 ]

<欧州選手権 トルコ・ジョージア>前半、同点ゴールが決まり喜ぶジョージア代表イレブンとサポーターら(ロイター)

 アフリク・ツベイバという名前をどれだけの方が覚えていらっしゃるだろうか。80年代後半から90年代にかけてのソ連、旧CIS(独立国家共同体)代表にして、ガンバ大阪のセンターバック。知名度では同時期に所属していたアレイニコフやプロタソフにかなわなかったものの、チームへの貢献度という点ではまったくヒケを取っていなかった。

 セリエAを経験していたプライドのせいか、木で鼻を括(くく)ったような対応が目立ったアレイニコフに比べると、ツベイバはとにかく真摯(しんし)だった。ガンバ担当記者としてすっかり惚(ほ)れ込んでしまったわたしは、数年後にモスクワを訪れた際、実業家に転身していた彼を訪ねた。

 現役時代と変わらぬ親しみやすさで迎えてくれた彼は、早速、自身が経営している日本食レストランに連れていってくれた。食べて、忌憚(きたん)のない意見をいってくれ、とのことだった。

 残念ながら、日本人スタッフが一人もいないそのレストランの味は、日本人の知り合いに勧めたくなるレベルではなかった。正直にそのことを伝えると、苦笑いした彼は、もう一軒の自身が経営しているレストランに行こうと言い出した。

 それが、彼の故郷であるグルジア――いまではジョージアと呼ばれている国の料理を出す店だった。

 そのおいしかったことときたら!たっぷりとニンニクの利いたチーズと鶏肉のシチューや、巨大な小(しょう)籠包(ろんぽう)のようなギョーザ。ロシア料理とは明らかに違う系統の味に、素晴らしくフルーティーなグルジア・ワインが何本もカラになった。

 泥酔したわたしは、その夜、パスポートを紛失するという大失態を犯すことになるのだが、以来、勝手に元大関の栃ノ心や在日ジョージア大使のティムラズ・レジャバさんに親近感を抱き続けている。

 なので、前日は痺(しび)れた。

 ドイツで行われているEURO24。主要国際大会初出場となるジョージアがトルコに挑戦した。ドイツ在住なのか、それとも陸路ドルトムントまで駆けつけたのか、ほぼホームといってもいい空気をつくり出したトルコに対し、ジョージアは明らかに動きが硬い。前半25分、ミュルドゥルにとてつもないボレーを決められた時点で、勝負はほぼ決したかに思われた。

 ところが、ここからジョージアは反攻に転じる。32分、ミカウタゼが至近距離からGKの脇下を破って同点に追いつくと、そこからはがっぷり四つ、いや、それ以上の試合を展開した。

 後半20分、ギュレルにとてつもないミドルをたたき込まれて突き放されても、ジョージアの勢いは衰えない。アディショナルタイム、GKまで参加してのセットプレーからカウンターで3点目を喫するまで、主導権を握っていたのは明らかにジョージアだった。

 ジョージアに肩入れしていたから、という面はたぶんある。それでも、まさか彼らがこれほど胸アツな試合をやるとは、予想外だった。

 だが、これがこれからの世界標準なのかもしれない。

 いまや、全世界のサッカー少年にとって、お手本は自国の選手ではなく、メッシでありエムバペである。指導教本は、ほぼ全世界共通になりつつある。となれば、どこからでもいい選手、いいチームが生まれて当然。日本は強くなった。アジアのレベルは上がった。だが、浮かれている場合ではないということを、ここまでのユーロから痛感させられている。 (金子達仁=スポーツライター)

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