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【コラム】金子達仁

人材獲得競争に大きな意味持つなでしこの五輪

[ 2024年7月25日 07:00 ]

<日本・ガーナ>後半22分、FKを決め喜ぶ藤野(左から2人目)と田中美(左)(撮影・小海途 良幹)
Photo By スポニチ

 サッカーとは直接関係はないが、またしても考えさせられるニュースがあった。体操・宮田選手の五輪辞退騒動である。

 一報に触れ、まずわたしの頭に浮かんだのは「かわいそうに」だった。「たかが」喫煙や飲酒で、一生に一度あるかないかの檜(ひのき)舞台、「五輪出場」が消えてしまう。なんて気の毒な。なんてもったいない。それが率直な感想だった。

 だが、すぐに違った考えが頭をもたげてきた。「たかが」喫煙ということは、わたしは未成年者の喫煙を容認していることになる。そして、もったいないと感じたのは、失われた舞台が「五輪」だからであって、これが国体やインカレであれば、受け止め方はずいぶんと違っていたはずだ。わたしは、未成年のアスリートが合宿でルールを無視しても問題視せず、何のペナルティーも必要ないと考える人間……ではないはずなのに。

 そもそも、今回の事件が発覚したのは、内部告発によるものだったという。これを黙殺していれば、結局は訪れたであろう発覚時に、火の粉は隠蔽(いんぺい)を図ったとみなされる競技団体側にも降りかかったことだろう。協会側としては、体操競技を守るためにも、泣いて馬謖(ばしょく)を切らざるをえなかったのではないか。

 今回のパリ五輪、オランダは過去に未成年への性犯罪歴がある選手を出場させる。わたしは反対だが、しかし、素行と実績は切り分けて考えるべきだという意見があるのも理解はできる。ただ、未成年者の喫煙には賛成できず、かつこれがインカレや国体であれば辞退もやむなしと考えている人間としては、気の毒にとは思いつつも、体操協会の判断を支持したい。そして、今後の宮田選手の再起を強く、強く期待したい。

 さて、この記事を皆さんが目にするころには、男子サッカーの初戦、パラグアイ戦は終わっている。予選でブラジルを葬った南米王者との対決は相当に難しいものになっているはずだが、果たしてどうなっているか。多分に相手のミスに助けられたとはいえ、フランスとテストマッチで引き分けた自信と手応えは日本選手の中にはっきりと残っているはずで、かなりやってくれるのではないかと期待している。ちなみに、直前のブックメーカーのオッズでは、日本の勝利が2倍、引き分けが3・4倍、パラグアイの勝ちが3・7倍と、僅差ではあるが、日本有利のかけ率がつけられている。

 一方、25日に予定されている女子サッカーのスペイン対日本戦に関しては、スペインの勝ちが1・44倍、引き分けが4・4倍、日本の勝ちが5・5倍と、かなりスペインの優勢を予想する数字がつけられている。ただ、グループ2位以内に入らなければ敗退となる男子と違い、12カ国で争われる女子サッカーは3位でもベスト8進出の可能性がある。もちろんなでしこたちはスペイン相手でも勝ちに行くだろうが、展開次第では、得失点差を考えた戦いに切り替える必要が出てくるかもしれない。それぐらい、今大会におけるスペインの評価は高い。

 必ずしも将来に直結するとは言い難い男子の五輪サッカーと違い、女子サッカーにとっての五輪は極めて大きな意味を持っている。バレーボールが復権を果たし、バスケットも世界のトップを争うようになったいま、パリ五輪は今後の女子球技の人材獲得競争に大きな意味を持ってくる可能性がある。願わくば、未来の才能がどの競技を選ぶか悩みまくるような大会にならんことを。 (金子達仁=スポーツライター)

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