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【コラム】金子達仁

セカンド・プランの異質さでつかんだ自信

[ 2024年9月12日 23:00 ]

<日本・バーレーン>試合後、サポーターにあいさつする日本代表イレブン(撮影・小海途 良幹)
Photo By スポニチ

 だいぶムカつき、イライラさせられた試合だったことを白状しておく。

 まずは試合前の国歌吹奏。過去、歴史的に何の因縁もなく、直近の対決で不利益を被ったわけでもないバーレーン・サポの君が代に対するブーイング。まったくのフラットだったバーレーンという国に対する印象は、垂直降下で下落した。

 いざ試合が始まってみると、バーレーン選手の転ぶこと転ぶこと。触れなば落ちんというか(違うな)、鎧袖(がいしゅう)一触というか(これも違う)、とにかく、1キロの衝撃を100キロあったかのように転げ回る。かつ、審判がことごとく笛を吹く。極め付きが上田に対するレーザー照射。あんまりムカつき、イラついたものだから、ついついグーグル翻訳でアラビア語の単語を調べてしまった。ジャバーノ、というらしい。日本語でいうところの「卑怯(ひきょう)者」。

 選手とて人間である。君が代にブーイングされて平気なはずはないし、相手の大げさな転倒も、ファンからのレーザー照射も、気分が良かったはずはない。どうやら、上田自身は照射されたことをほとんど気にしていなかったようだが、他の選手たちにはしっかりと見えている。わたし同様に、イラつき、ムカついていてもおかしくはなかった。

 ところが、日本の選手たちはまるで平静だった。

 あまりにも快適だった中国戦に比べると、バーレーンが歯ごたえのある相手であったことは間違いない。中国戦ほどには上手(うま)くいかない。点もなかなか入らない。そのことに対してもわたしは神経がささくれ立つのを感じていたのだが、これまた、選手たちは平然としていた。

 だから、これは戦術、戦略というより、マネジメントの勝利である。

 彼らは、明らかに覚悟し、準備していた。中国戦のようにはいかないということはもちろん、ひょっとすると、主審の笛の傾向まで頭に入っていたかもしれない。日本人の基準からすれば過敏すぎる笛に対して、驚愕(きょうがく)する選手、激高する選手はいなかった。仕方がない。こんなもの。そんな前提に立って試合に入っているようだった。試合前の意識づけ、つまりはマネジメントの勝利だった。

 過去の日本であれば、徹底して守りを固める相手にもう少してこずったかもしれない。中国戦の7得点に続き、今回は5得点。なぜこんなにもゴールを量産することができているのか。セカンド・プランの異質さが大きい、とわたしは思う。

 たとえば韓国の場合、彼らのいうS級選手によるプランAで上手くいかなかった場合、次の手段はせいぜいAダッシュか、Bしかない。相手からすると、基本的な対処方法はさほど変えずにすむ。

 ところが、いまの日本は、相手がプランAに慣れてきたところで、まったくタイプの違うプランZに切り替えることができる。この試合に関しては、それが堂安から伊東への交代だった。ドイツやスペインでも対処しきれなかった大胆なセカンド・プランへの切り替えに、アジアのチームが対応するのは簡単なことではない。

 中国戦ではCK、今回はPKと、前半のうちにセットプレーで先制できたことが試合を簡単にしたことは間違いない。次は、もう少し手を焼く日本を見てみたい気もするが、この2試合で選手がつかんだ自信は、手応えは、もう揺るがないだろう。2試合で12得点は、相手が弱いからできたこと、ではない。(金子達仁=スポーツライター)

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