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【コラム】金子達仁

殺人的な日程 選手負担減へ方向転換を

[ 2025年8月5日 17:00 ]

 測定方法やポジションによって、相当なズレはある。一説では900キロ。一説では3000キロ。ちなみに、体重65キロの人間が10キロ走った場合には約1000キロ消費されるという。何の話か。平均的なサッカー選手が1試合あたりに消費するカロリーの話である。

 900キロにしろ3000キロにしろ、わたしの調べた限り、これは数ある球技の中でもトップクラスの数字ではあった。僅差でサッカーを上回っていたのは、アメフトとラグビーぐらいだった。

 だとすると、現代のサッカー選手が置かれている状況は、明らかに狂っているといわざるを得ない。

 アメフトは、ラグビーは、21世紀の現代に至っても、創成期と同じ週に1試合のペースで行われている。NFLの場合、レギュラーシーズン、プレーオフを全勝し、スーパーボウルで優勝したチームであっても、1年間で戦う試合数は21である。

 ところが、サッカーのプレミアリーグに所属するチームは、リーグ戦だけで38試合あるというのに、FAカップ、リーグカップという2つの国内カップ戦があり、上位のチームはさらに欧州のカップ戦まで加わってくる。ざっと数えて、およそ70試合。

 しかも、サッカーの場合はここに代表の試合というものが乗っかってくる。南米やアジアの選手は、そのたびに時差のある旅を強いられる。国際サッカー連盟(FIFA)の新たな国際大会、クラブW杯に一部から猛烈な反発の声があがったのも無理はない。選手のコンディションを第一に考えた場合、確かにいまのサッカー界は殺人的である。

 とはいえ、サッカーがビジネスとして巨大化し、およそ経済大国とは呼べないような国でさえ、選手たちが巨額の報酬を受け取るようになっている以上、かつてのように、あるいは現在のアメフトやラグビーのように、週1試合のペースに戻すことは不可能に近い。サッカーは、もう戻れない河を渡ってしまった。

 では、殺人的なスケジュールが本物の犠牲者を出さないためにできることはあるのか。

 ある。

 カロリー・ベースの数字に話を戻すと、アメフト、ラグビー以外でサッカーを超える競技がもう一つあった。アイスホッケーである。では、NHLのチームは1年間にどれぐらいの試合をするのか。約80試合。1週間に2試合以上3試合以下というペースでカレンダーは組まれている。

 なぜこんなことが可能なのか。わたしが考える理由は2つ。一つは20分×3という試合時間、もう一つは選手交代の自由、である。

 交代不可な時代から、負傷交代のみが許されるようになり、95年に3人、18年に4人となったサッカーの交代人数は、いま、最大で5人までの入れ替えが許されている。

 もしFIFAが現状の殺人的な日程を恒久的なものにしようとするのであれば、選手交代の人数を増やし、なおかつ再出場を認めるのが一番手っとり早い。加えて試合時間を小分けにしてクールダウンの機会を増やせば、いまよりもっと試合数を増やすことだって可能かもしれない。

 もちろん、そうなった場合、サッカーはいまとは少し違ったスポーツになるだろう。個人的には寂しい気もするが、現状のまま突き進めば、必ずや犠牲者が生まれる。まずは日本から、まずは高校総体あたりから試験的に導入することはできないだろうか。(金子達仁=スポーツライター)

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