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【槙野智章観戦記】後輩・浅野の思い伝わった“有言実行弾”

[ 2022年11月25日 05:10 ]

FIFAワールドカップ(W杯)カタール大会1次リーグE組   日本2―1ドイツ ( 2022年11月23日    ハリファ国際競技場 )

<日本・ドイツ>後半、ピッチリポートする槙野智章(左)(撮影・西海 健太郎)
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 【槙野智章 ピッチサイド】カタール入りしている神戸のDF槙野智章(35)が観戦記を寄せた。18年W杯ロシア大会に出場し、森保ジャパンにも招集された経験を持ち、代表選手との親交も深い“お祭り男”。23日の日本―ドイツ戦はピッチから熱くリポート。選手目線のコラムを日本戦を中心に大会中随時掲載する。

 初めてピッチ解説を担当しました。ピッチの横から見たことで、選手のこの試合に懸ける思いが伝わってきました。勝利の瞬間は安堵(あんど)感が大きかったですね。

 前半は押し込まれる時間帯が長く、いら立っている選手、疲れて肩で息をしている選手もいましたし、プレーが途切れるたび、選手同士が何か話していました。ある意味パニック状態だったと思います。

 ドイツの布陣に対してうまく守れていなかったのでシステム変更が必要だと感じていました。すると前半の終盤、冨安選手がウオーミングアップのテンポを上げました。スタッフが耳打ちするのも見えたので後半開始から投入するんだなと分かりました。

 大胆な采配と言う人もいますが、そうは思いません。状況を見ながら、ここぞというタイミングで必要な選手をセレクトして相手の良さを消すシステムに変えただけ。森保監督は賭けをするタイプではありません。必然の采配だと思います。

 決勝点を決めた浅野選手は可愛い後輩。今の代表で一番バカができるキャラクターです。合宿中に選手の誕生日のお祝いをする時には一発芸、物まね、歌を披露するのが役目です。十八番は(元日本代表コーチ)手倉森さんの物まね。歌もうまいし、一発ギャグも面白い。いつも「拓磨コール」が起きます。

 ロシア大会では直前に落選しました。その時、選手ミーティングで本音をぶつけてきました。「俺はこのW杯に懸けていた。でも俺は出られない。だから俺の分まで頑張ってほしい」って。僕らはその気持ちと言葉を受け止めて戦いました。

 4年間どうしたらW杯に出られるかを考えていたはずです。悔しい思いをしたやつがW杯に出て決勝点を取る。忘れ物を取りに行くという言い方をしますが、それを実行できた男ですね。

 日本代表はメンタルの弱さを指摘されていました。「ゲルマン魂」と言われるほどメンタルが強いドイツにリードされながら同点にして逆転した。自信を持っていいと思います。僕もドイツにいたから分かりますが、対戦が決まってからドイツ人は日本を上から見ていたと思うんです。今後、ドイツ人が日本代表をどういうふうに見るのか楽しみです。

 チームの雰囲気は最高だと思います。ただ出場した選手は凄くテンションが高くなっているけど、出ていない選手、喜び切れていない選手もいるので、全選手を同じベクトル、同じテンションに持って行き一つになる必要があります。コスタリカ戦も気を緩めず、勝って1次リーグ突破を決めてほしいですね。(W杯ロシア大会日本代表、神戸DF)

 ◇槙野 智章(まきの・ともあき)1987年(昭62)5月11日生まれ、広島県出身の35歳。広島の下部組織で育ち06年広島加入。ケルン(ドイツ)、浦和を経て今季神戸移籍。U―17から各年代の日本代表に選出。09年日本代表に初招集され国際Aマッチ通算38試合4得点。W杯ロシア大会出場。1メートル82、77キロ。

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2022年11月25日のニュース