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金子達仁氏 無得点完敗の日本に必要なのは南野と鎌田の「1+1=2」超えるマリアージュ

[ 2022年6月15日 06:05 ]

キリン杯決勝   日本0―3チュニジア ( 2022年6月14日    パナスタ )

<日本・チュニジア>前半、シュートを外す鎌田(撮影・坂田 高浩)
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 ムカついている。憤慨もしている。イタリアのメディアであれば、火あぶりにでもしかねない勢いで吉田を批判するだろうし、フランクフルトのファンは目を疑うはずだ。このカマダは、あのカマダなのか、と。とにかく、情けない試合だった。

 ただ、白状すると、こんこんと湧き上がってくるネガティブな感情の中に、「絶望」はない。

 この惨敗で、札幌、国立、神戸と積み上げてきたものすべてを吹っ飛ばされた気分になっている方がいるかもしれない。気持ちはわかる。わかるのだが、たとえば、中学サッカーでもなかなか見られないお粗末さだった2点目の失点は、CBとGKの組み合わせをシャッフルしまくっていたから、だった。組み合わせの解を探す今の時期だからこその失点だった。

 なので「チュニジアに0―3!もうダメだ!」などとはまったく思わない。チュニジア人に笑われるのを覚悟でいうと、内容的には0―0が妥当な試合だった。

 ただ、当然のことながら失望はある。

 たぶん、森保監督はいま、化学反応というかマリアージュを模索しているのではないかと思う。個々の力勝負になると、いまの日本ではブラジルにほぼ太刀打ちできないことがわかった。ということは、おそらくはドイツ、スペインとやる時も厳しい。

 だが、サッカーの世界には時に、1+1=2という数学上の常識を覆す事象が起きることがある。歴史上最も有名なのは、82年のブラジル代表だろう。このチームにペレはいなかったが、ジーコたちが展開したサッカーの美しさは、いまだ語り草となっている。

 では、いまの日本代表で化学反応、マリアージュが期待できるというか、起きてもらわなければ困るのは誰と誰の関係か。

 わたしは、南野と鎌田だと思う。

 2人ともに欧州のトップレベルでプレーする一流選手だが、今のところ超一流、ではない。だが、そんな2人がかみ合ってくれれば、日本の可能性は一気に広がる。どういうわけか、これまではハーモニーを奏でた印象の薄い2人だが、ここできっかけをつかんでくれれば、とわたしならば考える。

 だが、雨の大阪は2人の縁を結ばなかった。それどころか、1+1が2に満たないと感じられてしまうぐらい、両者の関係性は冷えきっていた。

 この6月の4連戦、チュニジアを除く3チームは、ほぼ無垢(むく)な状態で日本と向き合ってきた。つまり、事前にチームや個人を研究した気配はほとんどなかった。

 チュニジアは違った。研究したかどうかはわからないが、彼らは明らかに、日本にどんな選手がいて、どんなサッカーをするかを知っていた。

 そういう意味では、かなり本番に近い状況下での試合だったということになる。

 こちらを知って臨んできたチュニジアに対し、日本はある程度主導権を握って試合を進めた。このことは評価できる。だが、相手GKを脅かす場面が極めて少なかったことは、深刻に受け止める必要がある。

 来たるべき本番で鎌田と南野をメンバーから外すことは考えにくい。だが、マリアージュという点で言えば、フロンターレ出身者で固めた時間帯の方がはるかに魅力的だった。正直、負けたという結果以上に、そちらの方が悩ましい。(スポーツライター)

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2022年6月15日のニュース