海外遠征 郷に入っても「No」と言える藤沢和師

[ 2021年6月18日 05:30 ]

藤沢和師
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 【競馬人生劇場・平松さとし】2008年の今くらいの時期、アメリカにいたのがカジノドライヴ(美浦・藤沢和雄厩舎)だ。

 同年2月に京都競馬場で新馬戦を勝ったこの馬を、伯楽はすぐに渡米させた。デビュー2戦目がかの地の重賞ピーターパンS(G2)。これを制すとアメリカ3冠最後の1冠となるベルモントSに、兄姉に続く3連覇を目指し挑戦させたのだ。

 結果は残念ながら挫石により出走がかなわなかったのだが、2戦目を快勝した直後には次のようなエピソードがあった。

 ピーターパンSのパドックでの模様が少しうるさかったと判断した主催者が、カジノドライヴ陣営に「開催日に1度パドックを周回させるように」と指示してきたのだ。海外ではその日に出走しない馬が開催日のパドックを周回することはよくある。藤沢和師は「郷に入れば郷に従わなければ」とこれを受け入れ、ある日のレースとレースの合間に1頭でパドックを回した。カジノドライヴはおとなしく周回したのだが、問題はその後に起きた。主催者側から再度連絡があり、今度は「レースに出走する馬と一緒に周回させるように」と要請されたのだ。

 これに対する日本のNo・1トレーナーの返答は「No」だった。「郷に入れば…」と語っていたが、首を縦に振らなかったのだ。藤沢和師はその理由を次のように語った。

 「競馬に使わないのに何度も開催日のパドックに連れて行くのは馬の精神面を考えるとよくない。最初にそう言われていればやったけど、先方の手際の悪さのツケをこちらが払う必要はないでしょう」

 どの国にも特有のルールがあり、それに従いながら挑むのが海外遠征ではあるが、相手のミスまで黙って聞き入れる必要はない。そういう態度を取れるのも藤沢和師の藤沢和師たるゆえんだと思ったものだ。

 そんな伯楽が今週末はユニコーンS(G3)にラペルーズ、マーメイドS(G3)にはサンクテュエールをそれぞれ出走させる。果たしてどんなパフォーマンスを見せてくれるのか。期待したい。(フリーライター)

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