【追憶の天皇賞・春】99年スペシャルウィーク “現役最強”へ完璧お膳立て 武豊騎手が見せた最高の道中

[ 2026年4月29日 06:45 ]

99年天皇賞・春を制したスペシャルウィークと武豊騎手
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 「長距離戦は騎手の腕」という。それまでは「能力上位(成績上位)の騎手同士で決まる」という意味で捉えていたが、この一戦を見て、言葉が意図しているところが明確に分かった。「長距離戦は道中をうまく運んだ騎手が勝つ。それはすなわち、その騎手に腕がある、ということである」。武豊騎手の騎乗ぶりは、そのことをはっきりと教えてくれた。

 スペシャルウィークは1番人気。前年のダービーを快勝したが、菊花賞は2着、ジャパンC3着。年が明け、アメリカジョッキークラブC、阪神大賞典を連勝し、ダービー以来のG1制覇に向けて成長を重ねていた。

 2番人気はセイウンスカイ。横山典弘とのタッグで皐月賞、菊花賞を制したスペシャルウィークの宿命のライバル。こちらも前哨戦の日経賞を快勝し、大一番へと駒を進めた。

 他にも前年の覇者で3番人気のメジロブライト、そろそろ「シルバーコレクター」と言われ始めていたステイゴールドなど個性的なメンバーがそろっていた。

 武豊騎手は3200メートル、全く隙がなかった。3枠3番から、まず会心のスタートを決めた。

 途中から逃げの手に出たセイウンスカイ。2番手はサンデーセイラ。3番手で並ぶのがスペシャルウィークとタマモイナズマだ。

 向正面に向いたところでセイウンスカイがペースを落とした。サンデーセイラがやや行きたがる格好になる。スペシャルウィークは、その背後からサンデーセイラをつつく形となった。

 力んだサンデーセイラに半馬身から1馬身の差でプレッシャーをかけられ続けるセイウンスカイ。2番人気馬はジリジリとスタミナを削られた。決してスペシャルウィークが“仕掛けた”展開ではないが、結果的にスペシャルウィークにとって優位な状況ができつつあった。

 3、4コーナー中間。後方からメジロブライトが差を詰める。場内からは大歓声。だが、武豊騎手は動かず、勝負どころを待った。

 スタミナを失ったサンデーセイラが下がり始めた。ここが勝負どころ。武豊騎手はスペシャルウィークをセイウンスカイの横にぴったりと付けた。

 道中でサンデーセイラに“圧”をかけられ、胸突き八丁の一番苦しいところで今度は1番人気馬が真横に来た。これはたまらない。セイウンスカイはスペシャルウィークに抵抗できずにかわされた。

 だが、この状況を2馬身後ろで眺めていたのが河内洋・メジロブライトだ。2頭が叩き合い、疲弊しながらも前に出た馬を捉える策。だが、セイウンスカイをかわしたスペシャルウィークにはまだスタミナが残っていた。1馬身差から間隔が詰まらない。ゴール前では半馬身差、スペシャルウィークが先着した。

 ライバル2頭の主戦の言葉はこうだ。セイウンスカイ・横山典は「あれだけマークされては厳しいよ」。武豊騎手のうまいところは、そのマークを自分でなく、サンデーセイラにさせたところ。自らマークに行けば、少なからずスペシャルウィークもスタミナを削られる。その時に勝つのは恐らくメジロブライトだったのだろう。

 そのメジロブライト。河内騎手は「あの脚で負けるとは」と天を仰いだ。メンバー中、最速の上がり3F34秒0を引き出した。やれることはやったが、メジロブライトの前方から34秒2の脚で“逃げ込んだ”スペシャルウィークに凱歌が上がった。武豊騎手の計算し尽くされた騎乗の前に届かなかったのだ。

 武豊騎手はお立ち台でこう語った。「ついに現役最強馬になりました。今年のスペシャルウィークは違うんです」。当時、30歳になったばかりの武豊騎手。地元・京都のファンに笑顔で手を振った。

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