榎木孝明 俳優人生の転換期はあの超大作「ずっと否定され続けて、すべてなくしちゃって」

[ 2023年10月15日 18:57 ]

榎木孝明
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 俳優の榎木孝明(67)が15日、TBSラジオ「爆笑問題の日曜サンデー」(日曜後1・00)にゲスト出演し、俳優人生の転換期となった超大作について語った。

 劇団四季を経て、1984年放送のNHK連続テレビ小説「ロマンス」で主人公の平七に大抜てき。これがテレビデビュー作になった。「役作りが趣味ですと言えるくらい、好きなんですよ」という榎木は、「舞台は最低1カ月稽古する。作っていくごとにどんどん変わっていける楽しさがあった」と、舞台稽古の楽しさを熱弁した。

 若手のころは、自己主張型だったという。「昔は“俺が、俺が”みたいな自己主張するタイプだったんですけど、だんだん年を取っていくと、ある仕事きっかけなんですけど、榎木を別に見せたいわけじゃねえなと思って。役を見せたいんだよなと思って」。さらに「自我をなくしていって、消えた時に、役がスポンと入ってくる瞬間が楽しくてしょうがないですね」とも語った。

 そのきっかけをくれた作品が、1990年公開の角川映画「天と地と」だった。武田信玄と上杉謙信の名勝負を描いた時代劇作品で、榎木は謙信役。「あの当時は32歳くらいで、若くて、“俺が俺が”で、そっくり返っていた。ところが、一切それが通用しなかったです」。鼻っ柱を折られた思い出があるという。

 メガホンを取ったのは、角川春樹監督。「何やっても、違う!違う!違う!と。違うとしか言ってもらえない。何が違うかの説明がまったくない。何カ月も。50億使った映画だったから、結構規模が大きくて、ずっと否定され続けて、すべてなくしちゃって」。俳優として築いてきた礎を完全否定された上、答えどころかヒントの提示もなかったという。

 「スタッフも200人くらいいて、海外からも取材に来ていて、いっぱいの中で罵倒されるんですよ。“お前の芝居は最低だ。早く芝居やめろ!人間もやめろ!”とか。誰も味方がいなくてね」

 ボロボロの精神状態で、数カ月がたったある日。覚醒の時は突然、訪れたという。「何カ月もたった後に、まったく自分が白紙状態でやった時の芝居を、“OK!俺が待っていたのはそれだ!”って。その時、“俺”がいなかったですよ。後で試写会を見たら、確かに顔は自分なんだけど、これ俺じゃねえわって」。スクリーンに映し出された、自分の演技による、自分ではない人物。「ずっとそれができたかというと、そうではないんだけど、そこは人生の大転換でしたね」と振り返った。

 苦しみ、もがいた末、ある到達点にたどり着いた榎木と、先回りしてそれを待っていた角川監督。2人の思いがようやく通じ合った瞬間だった。しかし「それをOK出た時に分かったのは、俺と角川さんの2人だけだったんですよ。周りは、“今まであれだけNG出ていたのに、何でこれで急にOKが出たんだ?”って」と、周囲にはその微妙な変化は分からなかったという。「その時は確かに、“俺”はいなかった。それを見破る彼って、すごい」。榎木はあらためて、角川監督の見る目に脱帽していた。

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