北川景子 「どうする家康」お市役 「子育ての感情が生きていると感じる瞬間」

[ 2023年8月6日 20:45 ]

大河ドラマ「どうする家康」で、お市(北川景子)が涙ながらに茶々(白鳥玉季)と話す場面(C)NHK
Photo By 提供写真

 【牧 元一の孤人焦点】NHK大河ドラマ「どうする家康」で、お市を演じた俳優の北川景子(36)がインタビューに応じ、収録の様子や2回目の大河出演への思い、時代劇への思いなどを語った。

 ──8月6日放送の第30回で共演した茶々役・白鳥玉季さん(13)の印象を聞かせてください。
 「お会いする前、扮装した写真が控室に貼ってあったんです。遠くから見たら自分によく似ていたので『この子、誰!?』と思いました(笑)。スタッフの方から『北川さんの娘を演じる子です』と説明を受けて、私が『雰囲気が私に似てる』と言ったら、周りの人たちも『似てる』と同意していました。一緒にお芝居をした時はとにかく目力の強さを感じました。彼女は役柄をきちんと理解して若いのに落ち着いていて、演出の方から『こうした方がいい』と指示を受けると『分かりました』と答えてすぐに修正していました。意志の強さ、プロ意識の高さを感じて、大人の役者さんだと思いました」

 ──5月21日放送の第19回で、ムロツヨシさん(47)演じる秀吉にお市がビンタを食らわすシーンが鮮烈でした。
 「お市の久しぶりの登場シーンで、ムロさんと会うのも久しぶりでした。お市にとって秀吉は信長にぺこぺこする目下の存在でしたが、時が流れて状況が変わって、娘たちを連れて行かれることも止められず、お市には悔しさ、先行きへの不安、自分へのもどかしさがあります。その一方で、秀吉との過去の関係性から、毅然とした態度を示したいという気持ちがあります。いろいろな思いをあの短いシーンで全て表現しなければいけなかったので難しかったです。ビンタは台本に書かれていて、ムロさんも演出の方も『思い切り叩いてください』とおっしゃっていましたが、私は人を叩くのは好きじゃないし、ムロさんのことは大好きなので、叩きたい気持ちはなかったです(笑)。叩くというより、ハエを追い払うように『私とあなたは格が違う』という表現ができればいいと思ってやりました。放送を見たら、パチンという良い音があのシーンに乗っていて『私はそんなに強く叩いてないけど…』と思いましたが、『もっとやれ』という反響もあったので、もっとやれば良かったですかね(笑)」

 ──2018年の「西郷どん」で篤姫役演じて以来、5年ぶりの大河でしたが、現場で役者としての成長を感じた部分はありましたか?
 「いい意味で肩の力を抜いてできました。それは経験のおかげだと思います。『西郷どん』の時は初めての大河で、しかも渡辺謙さんとご一緒するということもあって、常に緊張してそわそわしていました。今回はクランクイン前は不安もありましたが、インした後はずっと楽しくて緊張しないまま終わりました。私は普段から、時代劇を絶滅させたくない、時代劇が増えていってほしい、と思っているので、時代劇に関われてうれしいという思いもありました」

 ──時代劇の魅力は何ですか?
 「今の日本人の気質、今の日本人らしさには、日本の古き良き時代の人たちから受け継がれてきたものがたくさんあると思います。海外の方に比べて自己主張が強くなく、思いやりを持って相手の気持ちを慮るのは日本人の良いところだと思います。時代劇には義理、人情、正義感、筋を通した生き方が描かれていますし、単純に着物を着てきちっとした所作で動く形式美が好きだということもあります。古き良き時代の日本のことを日本人が描いた作品を、海外の人たちに見てもらうことは、この国の力を強くするという意味でも大事なんじゃないかと思っています」

 ──北川さんは2010年公開の映画「花のあと」に主演して以来、時代劇にも出演して来ましたが、「どうする家康」でも時代劇の魅力を感じましたか?
 「長い髪を下ろした鬘をかぶるのは初めてで、あの鬘をかぶって打ち掛けを着て歩くだけで楽しいと感じました。衣装を着れば自然に今の歩き方、今の座り方ではなくなって、その時代の所作ができます。そして、今回初めて乗馬に挑戦しました。『花のあと』でお茶やお花、歩き方、座り方、障子の閉め方などの所作を一通り学んで、殺陣も経験しましたが、乗馬はやったことがなくて、ずっと『乗馬をやりたい』と言い続けてきたんです。乗馬シーンのある時代劇が減っている中で、今回やっと実現して、ちゃんと扮装して馬に乗ることができて凄く痺れました。本当にうれしかったです」

 ──乗馬はどのくらい練習したのですか?
 「昨年6月からの収録に向けて、昨年2月か3月から始めて4カ月くらい練習しました。練習する場所が八ヶ岳にあったので、往復で4時間くらいかかるのですが、多い時は週に2回通って2鞍か3鞍乗っていました」

 ──今年で役者デビュー20周年ですが、演じることの楽しさを現場で感じますか?
 「毎回、楽しさを感じています。始めてから10年くらいはとにかくがむしゃらで、楽しさを感じる余裕もなくて、キャリアを重ねて30代になった後も周りの期待が重荷に感じていたのですが、結婚して子供を持って、ここ2年間くらいはとても充実していて楽しいです。役をもらえるありがたみ、現場に立たせてもらえるありがたみを以前より強く感じます。『北川景子』は仕事をしている時だけの名前なので、その名前で呼んでもらえることもシンプルにうれしいです。子育てしている時の感情、一人でいた時にはなかった感情が役を演じる上で生きていると感じる瞬間もあります」

 ──その瞬間が「どうする家康」でもありましたか?
 「茶々とのシーンは、泣こうと思わなくても自然に涙が出てきました。自分の人生の経験が自然に役と重なった時、これまでの2倍の表現ができると思いました。その時にも役者の楽しさを感じました」

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局総合コンテンツ部専門委員。テレビやラジオ、映画、音楽などを担当。

続きを表示

この記事のフォト

「美脚」特集記事

「STARTO ENTERTAINMENT」特集記事

2023年8月6日のニュース