岩下志麻 原点となった小津安二郎監督の魔法の言葉「悲しい時に悲しい顔をするもんじゃないよ」
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「東京物語」「晩春」など数々の名作で世界にその名をとどろかせる小津安二郎監督。2023年は生誕120年&没後60年のメモリアルイヤーだ。この節目の年に松竹は一大プロジェクトを実施。その一端を、誕生日にして命日に当たる(昨年)12月12日に東京・築地の松竹スクエアで開いたキックオフイベントで明らかにした。スポニチ本社のある江東区の深川は小津監督の生誕地。世界の巨匠もグーンと身近に感じられ、ゆかりの周辺を探訪した。さらには遺作となった「秋刀魚の味」に主演した岩下志麻さんに登場願い、撮影時の思い出などをたっぷり語ってもらった。
岩下にとって「秋刀魚の味」は宝物の1本。作品との出合いは財産となり、演技を考える原点にもなったという。そんな志麻さんが小津監督の思い出をしみじみ語る。
――どんな方でしたか?
おしゃれでしたね。白いワイシャツとかズボンとか、いろいろこだわってらっしゃいました。体は大きい方でした。でも穏やかでね。怒った顔を私は見たことないし、怒鳴った顔ももちろん拝見したことない。本当に穏やかで優しい先生でした。
――笠智衆さん演じる父親に花嫁姿を見せて嫁いでゆくシーン。ジーンときました。
他のシーンではいつも50回とか60回、時には100回もテストがあったんだけど、あそこのシーンだけ1回でOKが出たんです。先生のイメージにぴったりだったのかしら。
――100回も?
巻き尺をいじりながら「失恋」を表現するシーンは100回もテストを重ねました。ミシンの前に座って巻き尺をいじる。セリフもないし、泣くわけでもない。ただただ巻き尺を右や左の手に巻き付けて、それをやってるだけ。失恋の感じを出すシーンだったんですけど出来なくって…。
――なかなかOKが出なかったんですね。
ずっとメロドラマをやってましたから、感情過多になるお芝居をやる癖がついていたんだと思うんです。失恋したからってすごく悲しい顔をしてたんじゃないかな。小津先生は「無表情に、無表情に」と指示されましたが、悲しい感情がわいてきちゃって…。
それと巻き尺を巻くリズムも先生のリズムと合わなかったんだと思うんです。先生、すごく自然体でリズムを大事になさってたから、それが合わなかったのかも。その後、誘われてお食事に行った時に「志麻ちゃん、悲しい時に人間っていうのは悲しい顔をするもんじゃないよ」って。「人間の感情ってのは、そんなに単純じゃないんだよ」とおっしゃるんです。「ああ、やっぱり失恋したからって、私はすっごい悲しい顔してたんだろうなと後で思いましたね」
――監督は小道具へのこだわりも強かったと聞きます。
絵なんか全部本物ですよ。何百万円という絵を借りてらして。先生は、言ってみれば、ワンカットが一枚の絵ですよね。ローアングルのカットも絵のようです。(北鎌倉の)先生のご自宅から見て鎌倉は南で、東京は北。「鎌倉に1センチ、東京に2センチ」と、絵をかける場所までこだわってらしたんですよ。それで何百万円の、いわゆる本物の絵ばかりだから、小道具さんすごい大変だったと思います。
あと小道具で私、すごく覚えているのは、(劇中に出てくる)お料理屋さんの食器。赤坂の本物の料亭から取り寄せて使ってらした。だからね、清水焼きよみずやきとか九谷焼くたにやきとか、本当におしゃれないい食器がいっぱい並んでましたよ。
――色にもこだわりがあったとか?
先生は赤がとてもお好きでしたね。改めて小津作品を見てみると、ワンカットに必ず赤が入ってるんです。食器でも、ちょこっと赤の模様が入ったお茶碗ちゃわんが置いてあったり、あと、自宅(のセット)なんかでもやかんが赤だったり、ゴルフバッグが赤だったり。
表(のセット)だと、ネオンが赤だったり、ポスターが赤だったり。とにかくワンカットに必ず赤が入ってました。その時は気がつかなくて、だいぶ経ってから、私が本を書く時でしたね。プロデューサーの山内静夫さんに「どうして小津先生は、赤をね、ああやってワンカットの中にもお入れになったんですか?」と尋ねたら「それは小津美学。先生は赤が大好きだったんだよ」とおっしゃってました。色も小道具も一つ一つ凝ってらして、本物志向でした。
――演出の特徴は?
自然体で、先生のリズムがあるから、なんか変な演技プランを考えて撮影に臨むと却下なのね。だから私、その後に思ったんですけど、先生の演出っていうのは白紙で行って、まあ抽象的な言い方だけど、先生に、その役の色を塗ってもらう。そういう演出だなっていう感じがしました。例えば首の動かし方、首の動かし方のテンポ、首の上げ下げのテンポ、そういうのまで、全部指導なさいましたからね。だから、こっちのリズムで勝手にやっても全部NGです。やっぱり先生の額縁の中にきちっと収まらなきゃダメでしたね。
――右頸部けいぶにがんが見つかり、還暦の誕生日に逝った監督。病魔が憎いですね。
撮影が終わる頃に「もう1本やろうね」とおっしゃってくれたから、本当に残念です。お見舞いに伺った時もね。「僕は何も悪いことしてないのにね」と言って涙流されてね。本当に今でも思い浮かびます。先生の病床の姿が。もう1本出来れば、もうちょっと、先生の中に入れたかなと思いますね。60歳の誕生日に亡くなられた。早いです。1本と言わず、まだまだ何本も撮っていただきたかったです。
――小津作品への出演は岩下さんにとって?
財産です。ずっと前にフランスの小さな映画祭に招かれ、そのシンポジウムに参加したんですが、ジャーナリストの方たちが何を私に質問したかというと、全部小津監督の「秋刀魚の味」のことでした。「どんな監督だった?」「ローアングルの演出をどういうふうにしたのか?」とかね。本当に小津監督に関しての質問攻めでした。「ここまで世界的になられて、凄いなと思いましたし、出させていただいて改めて光栄だと思いました」
――原点ですね。
「悲しい時に悲しい顔をするもんじゃない」「人間の感情ってそんなに単純じゃないよ」とおっしゃったのが、その後の原点になってるのね、よく考えると。「悲しい時に悲しい顔をしないで」と先生そうおっしゃったから、悲しい時にちょっと笑って言ってみようかとか、怒って言ってみようかなとか、そういうふうに発想が飛んでね。先生のあの言葉が、演技を考えるに当たってすごい原点になってます。独特の演出方法。「秋刀魚の味」に出させていただいたことは本当に光栄なことだし私の宝物です。
――記念イヤーは映画館での上映もあるようです。
やっぱり映画はね、大きな画面で見たい。さらなる魅力が見えてくるし、テレビで見てもそれなりには素晴らしいですが、やっぱり小津監督の作品は映画館で見てほしいです。
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