前澤氏「人生最大の危機」を救ったのは孫会長  ヤフーが4000億円投じてZOZO買収

[ 2019年9月13日 05:30 ]

肩を組み、ピースサインする孫氏(左)と前澤氏(撮影・木村 揚輔)
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 インターネット衣料品通販大手ZOZO(ゾゾ)は12日、創業者の前澤友作氏(43)が同日付で社長を退任した。ヤフーからの買収案を受け入れ、同社の傘下に入ることが決まったのを機に前澤氏が決断。後任には取締役の沢田宏太郎氏(48)が昇格した。都内での会見にはヤフーの親会社ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長(62)も登場し、劇的買収について語った。

 前澤氏が社長を退任する決断を下したのは9月に入ってからの「この2週間」だったという。「僕より良い新社長がすぐ横にいた。野性的な勘で僕が変に居座っても良いことがない」と淡々と説明した。

 実は今回の買収劇を取り持ったのは、前澤氏が尊敬し、ゴルフ、カラオケ、風呂などを共にするほど慕う孫会長だった。月旅行の準備などを理由に社長退任を相談してきた前澤氏に対し「2人で一緒に話をしなさい」とヤフーの川辺健太郎社長(44)への相談を促したことが発端。川辺社長によると「話し合いはここ数カ月」だったという。

 ZOZOを取り巻く環境は厳しかった。一時は一世を風靡(ふうび)したゾゾスーツも採寸のトラブルや生産遅れなどで顧客離れが顕著に。昨年10月にはゾゾスーツ廃止の方針を決め、前澤社長も失敗を正面から認めていた。また、昨年12月にはファッション通販サイト「ゾゾタウン」で会員制の割引サービスを強行。不満を爆発させた大手ブランドが次々に撤退し、セールは半年で打ち切りとなり、ブランドのZOZO離れも起きた。こうした中、昨年7月には一時4875円をつけた株も今年2月に1000円台に落ち込むなど株価の下落も発生。前澤社長は「人生最大の危機」(業界関係者)に陥っていた。

 ある関係者は「(買収は)ここ1カ月以内に一気に決まった話。まさに急転直下の決定だった」と平行線をたどっていた買収交渉がここに来て一気に進んだことを明かした。結果的には孫会長に「人生最大の危機」を救ってもらった形だ。

 ヤフーも約4000億円の投資額で、若い世代を中心に800万人以上のZOZOの顧客基盤を取り込みにかかる。ZOZO買収のメリットは大きく、結局はウィンウィンの買収劇となった。

 質疑応答の最後で、約2000億円とも言われる借金の内容について指摘された前澤社長は「なんで僕が買ったもん全部言わなきゃいけないんだ」とこの日初めて声を荒らげた。その表情から野望渦巻く群雄割拠のIT業界で迎えたピンチからのギリギリの脱出劇だったことをうかがわせた。

 ≪前澤氏が涙ぐむ場面も≫○…前澤氏が涙ぐむ場面が2度あった。いずれも社員へのメッセージを口にした時で、「普段は持ち歩かない」というハンカチを用意して涙を拭った。この日朝にヤフーとの提携を告げた際「僕が辞めるとは予想もしてなかったみたいで、驚きの声が上がっていた」と様子を説明。何度も言葉を詰まらせて「本当に必死についてきてくださり、時には泣き笑い、楽しく…。21年間ともにありがとうございました」と感謝した。

 ◆前澤 友作(まえざわ・ゆうさく)1975年(昭50)11月22日生まれ、千葉県鎌ケ谷市出身の43歳。早実卒。ハードコアバンド「SWITCH STYLE」のドラマーとして98年メジャーデビュー。98年に有限会社「スタートトゥデイ」を設立し、00年に株式会社化。公益財団法人「現代芸術振興財団」の会長。

 ◆沢田 宏太郎(さわだ・こうたろう)1970年(昭45)12月15日生まれ、横浜市出身の48歳。早大理工学部を卒業後、94年NTTデータに入社。08年スタートトゥデイコンサルティング設立を経て、13年からスタートトゥデイ(現ZOZO)取締役。

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