蜷川さんと40年タッグ 平幹二朗「一度も演技を褒めてくれなかった」

[ 2016年5月16日 13:55 ]

蜷川実花さんが撮影した蜷川幸雄氏の遺影

 多臓器不全のため12日に死去した演出家の蜷川幸雄(にながわ・ゆきお)さん(享年80)の葬儀・告別式が16日、東京・青山葬儀所でしめやかに営まれた。弔辞は5人の俳優によるリレー形式で行われ、40年に渡る“盟友”の平幹二朗(82)は「17本の芝居、僕の宝です」と感謝の言葉を贈った。

 平と蜷川さんの出会いは40年前の1976年。三島由紀夫の「卒塔婆小町」を蜷川さんが演出し、平が「99歳の老女」を演じた。その時から「この人とは長く付き合うだろうなという予感」があったといい、その後も「王女メディア」「近松心中物語」「タンゴ・冬の終わりに」「テンペスト」「リア王」などの数々の舞台でタッグ。「17本の芝居、僕の宝です。充実した演劇人生を生きることができました。本当にありがとう」とお礼の言葉を述べた

 長年に渡って交友を重ねてきたが、「あなたは一度も僕の演技を褒めてくれませんでしたね」と2人だけが知るエピソードを告白。そして「シャイなのだということは分かっていましたが、何とかしてあなたから褒め言葉を引き出したくて、熱演に熱演を続けました。肺を痛めてしまうまで」と激しい稽古の様子を振り返った。「でもあなたの中の怒りと熱情に突き動かされ、僕の中の焔(ほむら)が燃え上がってしまうのです。その火はまだ消えてはいません。あなたがいなくなった後、この焔を誰に受け止めてもらえるのか」と問い掛け、「まるでシャーロック・ホームズに死なれたワトソンのように途方に暮れてます」と吐露した。

続きを表示

2016年5月16日のニュース