【虎番リポート】藤田&中川の1軍抜てきに岡田監督の“親心”「経験積ませとけば全然違うやんか」

[ 2023年2月23日 07:30 ]

1軍キャンプに参加し充実した日々を送った藤田(左)と中川(撮影・北條 貴史)
Photo By スポニチ

 見慣れぬ2つの大きな背番号が、沖縄・宜野座のグラウンドで大声を出し合っている。阪神・今季4年目の「59」藤田健斗と、同2年目の「68」中川勇斗だ。藤田は16日、中川は15日に1軍合流。大先輩に囲まれ、緊張と失敗が続く捕手2人は少しずつだが確かに、成長曲線を描いている。

 今キャンプ第5クールのある日。藤田が帰路に就いたのは、時計の針が午後6時を指そうかという頃だった。疲れた顔も見せず、1軍の舞台で貴重な経験を積める幸福感を吐露した。

 「何とか存在感を示せるように。少しでも自分が成長できるヒントがあると思うので、そこをしっかり見落とさないよう、気を引き締めてやっている」

 飛躍の鍵を先輩の姿から学ぶことも多い。それが捕手というポジションならなおさらだ。「1軍の投手は、ブルペンでの意識が高く、打者を想定した投げ込みを行うなど、ファームとは差がある」。そのレベルに歴然たる差があるのだろう。絶好の機会。投球練習を終えた昨季の投手3冠、エース・青柳の胸に飛び込んでみた。

 「(捕球時の)構え方一つとっても、自分の意図をしっかり伝えられるようにしたら、もっとよくなるよ、と教わった。今後の引き出しにしていきたい」

 21日のケースノック中、併殺練習で一塁走者役を務めた際には、ベースカバーに入った二塁・渡辺諒を避け切れずに衝突…。ヒヤリとする一幕でも、全力プレーが初々しい。

 「僕が年齢は一番下なので、誰よりも元気な姿でグラウンドに行くようにしている」

 1軍メンバーでは最年少19歳の中川は、佐藤輝をはじめ、先輩からは「ハヤト」の愛称で親しまれている。こちらも帰りのチームバスに乗り込むのは連日最後。中川は入団1年目だった昨年3月12日の中日戦(オープン戦・甲子園)で1軍経験があるものの、出場は1イニング。“研修”の要素が強かった。昨季はウエスタン・リーグで50試合に出場。21歳の藤田との「2年」の差は意外と大きい。それは、中川自身の言葉からも読み取れる。

 「(主力投手は)どういう球を投げるのかとか、不安はある。球に強さも伸びもあって、ミットが差し込まれてしまう部分もある」
 投手との“呼吸”も勉強中だ。16日の実戦形式の打撃練習で青柳とコンビを組んだ際、サインが合わない場面が多く、9回に出場した18日のDeNA戦では岡留、岩田と組んで2失点。全てを糧としたい若虎の心の支えになるのは、岩崎からのある言葉だ。

 「僕から“何か気づいた点ありますか”と聞きに行ったら“キャッチング、いいよ”と言っていただいた」

 日進月歩。岡田監督も、今すぐ必要な駒としてはカウントしていない。「まだまだ1軍の戦力にはなれへんけど、やっぱりそういう経験積ませとけば全然違うやんか」。経験に勝る財産はない。どんどんミスしたらええんよ――。指揮官の心の声が聞こえる。

 2人はまだスタート地点に立ったばかり。岡田監督の“親心”を胸に刻んで鍛錬を積み、一日でも早く恩返しをするつもりだ。(八木 勇磨)

 ◇藤田 健斗(ふじた・けんと)2001年(平13)10月18日生まれ、滋賀県出身の21歳。中京学院大中京では3年夏に甲子園出場し4強。19年ドラフト5位で阪神入り。1メートル73、83キロ。右投げ右打ち。

 ◇中川 勇斗(なかがわ・はやと)2004年(平16)1月27日生まれ、愛知県出身の19歳。京都国際では3年時に春夏連続で甲子園出場し、夏は4強。21年ドラフト7位で阪神入り。1メートル72、75キロ。右投げ右打ち。

続きを表示

2023年2月23日のニュース