【内田雅也の追球】大事な決戦には積極性が物を言う ビジターの阪神は先攻の利点を生かしたい

[ 2022年10月8日 08:00 ]

2014年10月18日、セ・リーグCSファイナルSで、敵地で巨人相手に4連勝し、記念撮影する阪神ナイン

 今や伝説の「10・8」は同率首位で並んだ巨人、中日がともにシーズン最終戦でまみえた一戦である。1994年10月8日、28年前のきょう、ナゴヤ球場で行われた。

 勝った方が優勝という世紀の一戦で巨人監督・長嶋茂雄は「野球のすべての面白さを凝縮した」と語る死闘だった。

 中日は監督・高木守道の解任が表面化、次期監督に星野仙一の名が浮上するという異常な状態でシーズン終盤に猛追し、決戦に持ち込んでいた。

 当時担当は阪神だったが、援軍で取材に出向いていた。あの日、両チームはもちろん、スタンドも報道陣も異常な緊張感に包まれていた。

 「試合が始まってすぐに(中略)雰囲気がこれまでと違うのに気づきました」と高木が語っている。鷲田康『10・8』(文春文庫)にある。「横綱相撲」だった巨人が「なりふり構わずに必死に向かってきた。それがこっちのベンチまで伝わってくる感じでした」

 結果、巨人が勝った。2回から2、1、2、1と4回連続であげた6点が効いた。ナゴヤで11連敗中だった今中慎二をKOしたのは積極的に向かっていった結果である。

 何が言いたいか。「10・8」ほどの大一番でなくとも、大事な決戦には積極性が物を言う。

 阪神はきょう8日、横浜でクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージを迎える。3位で滑り込んだため、CSはすべてビジター。つまり先攻となる。先に攻撃する利点を生かしたい。

 ホームアドバンテージは相手にある。今季セ・リーグのホームゲーム成績は223勝197敗9分けで勝率5割3分1厘。少なくともここ40年はほぼ5割3分前後だ。

 ただし、短期決戦は別の要素が絡む。先発投手の立ち上がり不安はより大きくなる。打者の緊張度も増す。重圧のなか、先攻で積極的に攻撃を仕かけ、初回や序盤から前半でリードしたい。高木の言う「なりふり構わぬ必死さ」が問われる。

 プロ野球で、ともに最終戦で勝った方が優勝という大一番は他に1973(昭和48)年10月22日の巨人―阪神戦(甲子園)がある。この時も巨人が1回から2、2、1、1、2と5回連続得点と速攻だった。阪神も2014年のCSファイナルステージ、巨人に4連勝を経験している。いずれもビジターの先攻で勝っている。 =敬称略=
 (編集委員)

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