高校野球は「人」に全権が託されている 名勝負彩る審判員の「精度」

[ 2022年8月21日 08:00 ]

甲子園球場
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 第104回全国高校野球選手権は22日に決勝を迎え、下関国際(山口)と仙台育英(宮城)がともに初優勝を懸けて激突する。アマチュア野球担当としてネット裏の記者席から見届けてきた熱戦。11年から16年までNPB審判員を務めた経験から、ドラマを彩った審判員に拍手を送りたいと思う。

 リプレー映像による判定検証が当たり前となったプロ野球とは異なり、高校野球は「人」に全権が託されている。甲子園は全試合、全国放送でテレビ中継され、注目度も高い。判定ミスを「取り戻す」ことのできないプレッシャーの中で、今大会の審判員は高い判定精度を保った。

 特筆すべきは一塁のフォースプレー。「セーフ」「アウト」の一瞬の判断は難度が高く、プロの試合を裁くNPB審判員でも苦手意識を持っている人がいるくらいだ。だが、今大会では明らかな間違いは少なく、間一髪の判定を正確にジャッジできていた。要因は「基本の徹底」にあると思う。

 ミスジャッジを防ぐため、判定をコールする寸前に「本当に合っているか?」と自らに疑問を投げかけるテクニックがある。勢いで判定することを防ぎ、フラットな気持ちに戻って最終判定を下すのだ。一塁のフォースプレーでは一塁手の「捕球確認」でこの間をつくることができる。

 間一髪のアウト場合、一塁塁審はまず打者走者の一塁到達より早く一塁手がボールを捕球したか、を確認。ここで「アウト」を判断し、最後に「一塁手がグラブの中でボールを確保しているか」を首を振って確認し「ヒー・イズ・アウト!」とコールする。一塁のフォースアウトの判定では多くの場合、勢いで「アウト!」としてミスジャッジになりがちだが、今大会の審判員は「確認の首振り」を徹底できている。一瞬の間があるからこそミスが少ない。

 NPB審判員から転身した記者。「誤審」は現在の仕事に置き換えると「誤字、脱字や事実誤認」にあたる。原稿を出す前に現場の審判員を見習って、もう一度首を振って確認してみようと思う。(記者コラム・柳内 遼平)

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2022年8月21日のニュース