【センバツ候補校特集(1)】過疎の町の希望 元プロ監督就任、アイデア満載の練習でメキメキ成長

[ 2021年1月26日 08:15 ]

矢上(21世紀枠 中国・島根)

配管にゴルフボールを入れるバント練習
Photo By スポニチ

 第93回選抜高校野球大会(3月19日開幕、甲子園)の出場32校を決める選考委員会は今月29日に開催される。新型コロナウイルス感染拡大の影響で昨年の大会が中止となり「令和初」の開催となる選抜で春夏通じて初の甲子園出場の吉報を待つ候補4校を紹介する。1回目は矢上(島根)。

 広島との県境の山間地にある邑南(おおなん)町は人口約1万人で過疎に悩んで久しい。そんな中、町民の希望の一つが町内唯一の高校である矢上の野球部だ。定員割れが続いたが、部活動の活性化など町と連携し15年に「矢上高校将来ビジョン」を策定。17年7月から元広島捕手だった山本翔監督(37)が就任し急激に力を付けると、県外志願者も増加。近年は倍率1倍を超え全校生徒246人中、野球部員は62人(3年生含む)を数えるまでになった。

 山本監督は退団後、保険会社に勤務する傍ら、広島経済大監督として全日本大学選手権に導くなど実績を積み重ね、広島時代に2軍戦で同町を訪れた縁もあって誘いを受け、家族そろっての移住を決断。現在は町の教育委員会の生涯学習課で施設管理に従事しながら指導する。自身はプロで大成しなかったこともあり選手目線に立つ。最後まで目を切らないよう、バットに見立てた配管にゴルフボールを入れるバント練習などアイデア満載の練習も特長だ。

 部員は町の清掃活動や冬場の雪かきを積極的に実施。一方で、夏の大会前には毎年、カレーを振る舞ってもらうなど町民との交流が続く。19年秋に島根大会初優勝した際には400人に出迎えられた。指揮官は「町民の娯楽の一つに野球部がなってくれれば」とさらなる活躍を期す。

 昨秋の島根大会では初戦から準々決勝まで3戦連続サヨナラ勝ち。開星との3回戦は0―2の9回2死満塁から3連続四死球で逆転。準々決勝・大社戦ではエース右腕の桃田夢叶(ゆめと=2年)が延長13回を投げ抜いた。「粘ってチャンスをものにするのが自分たちの野球。夢が近づいていると思うと、わくわくします」。甲子園という新たな夢の共有実現の時を待つ。 (北野 将市)

 ○…2001年から始まった21世紀枠の9地区別選出では東北の12校が最多。中国地区は5校だが、02年松江北、03年隠岐、13年益田翔洋、20年平田と島根県勢が4校を占め、県別では北海道と並び最多となっている。

続きを表示

この記事のフォト

2021年1月26日のニュース