【内田雅也の追球】「第六感」への気づき

[ 2021年1月26日 08:00 ]

西宮の日野神社で咲いていたロウバイ
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 阪神監督・矢野燿大は本紙評論家だった当時、興南高(沖縄)監督の我喜屋優と対談している。矢野は朝日放送(ABC)解説者でもあり、同局の番組『虎バン』とのコラボ企画だった。

 2012年7月のことだ。現役引退後2年目、矢野は「いろいろ吸収して将来は指導者で戻りたいなと思っています」と語っている。

 その点では我喜屋の理論は刺激的だった。キャッチボールで「相手の胸に投げなさい」といった指導はしない。試合中、ボールはどこに飛んでくるかわからない。だから「相手の球に反応して追いつき、正面で捕りなさい」という考え方だ。

 さらに、人生における「気づき」を大切にしている。選手が日課としている早朝の散歩で「五感を働かせる」訓練を行っているそうだ。

 11年に出した著書『逆境を生き抜く力』(WAVE出版)で<五感を鍛えれば第六感がひらめく>とある。<吹く風や気温の変化を肌で感じる。鳥や虫の声に耳を澄ませる。季節ごとの花や木々の変化を自分の目で確かめる……>。人生に通じる野球である。<五感を育むことが、野球を強くする近道>という。

 何が起きるか分からない野球である。相手やボールに手前で反応して対応したい。<第六感を働かせなければならないことの連続である。(中略)この第六感が働くか働かないかで、試合の結果は大きく変わる>。

 野球記者もできれば、そんな洞察力を持ちたいが、まずは観察、気づきだろう。週明けの朝、晴れわたった空が気持ちよく散歩に出た。自宅のある西宮は金土日と雨で、散歩は4日ぶりだった。

 横を通り過ぎる際、神社で梅が咲いているのが見えた。紅白の花をつけた木が並んでいる。

 「きれいでしょう」と声がした。ボランティアで森の管理を行っている男性らしい。定年後25年以上、ずっと手入れや掃除をしているそうだ。

 そして「ロウバイも咲いていますよ」と言う。何と、隣に黄色い花が咲き誇っていた。気づかずに通り過ぎていたのだ。「年末12月23日に咲きました。いい匂いがしますでしょう」。言われて初めて香りがした。

 こんな五感ではまだまだである。ロウバイは「迎春花」と呼ばれ、他の花々に先がけ、春の到来を告げてくれるらしい。

 キャンプインまで1週間を切った。五感を鍛え球春を迎えたい。 =敬称略= (編集委員)

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