あと1人で巨人倒せる――KK明暗のドラフト乗り越え 西武・清原、2年分の涙

[ 2020年4月16日 09:30 ]

1987年の日本シリーズ、因縁の巨人を倒せる――西武・清原(左)はまだ2死にもかかわらず顔をくしゃくしゃにして泣きじゃくる。心配した辻が「目を開けて守ろうぜ」と駆け寄った
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 【Lega-scene あの名場面が、よみがえる。~名勝負編~】昭和、平成の名場面を本紙所蔵の秘蔵写真からお届けする「Lega―scene(レガシーン)」。プロ野球の名勝負編、第3回は1987年の日本シリーズで流した清原和博内野手(当時20)の涙です。85年ドラフト会議で憧れた巨人から指名されず涙を流してから2年。ついに打倒・巨人を果たした2年分の思いが詰まったシーンです。

プレーが中断し
一塁側のファンは
ざわついた。

2点リードの9回2死。
2連覇目前の西武ナインが
球場の全ての人が
守備位置で仁王立ちし
涙する清原和博を
温かい視線で見守った。

二塁手の辻発彦が
歩み寄った。
最も信頼する先輩の手が
肩に触れると
清原の唇は震えた。
「キヨ、最後や。
 しっかり目を開けて
 守らんかい!」
と励まされ、うなずいた。

日本一は
何度も味わった。
PL学園で
夏の甲子園を2度制覇
西武入団1年目の前年は
高卒新人史上最多の
31本塁打を放ち
日本シリーズで広島も倒した。
でも今、
涙の向こうにいる相手は
巨人だ。

85年秋のドラフトでも
泣いた。
相思相愛と信じた
巨人の1位指名は
「KKコンビ」のもう一人
桑田真澄だった。
それから2年
憧れの巨人を倒して
ようやく
高校時代と
決別できる。

「終わった瞬間
 両親のことが
 頭をかすめました。
 夢を実現したんやなあって」

清原和博、20歳。
少年から大人に変わる
涙だった。(敬称略)

 《ナインも目真っ赤》日本シリーズ第6戦に勝利し4勝2敗で王貞治監督率いる巨人を下しての連覇。「西武連続日本一」ではなく、東京版本紙1面のメイン見出しは「清原泣けたぜ」だった。“運命のドラフト”から712日目。本人にしか分からない2年間の思いが凝縮された涙は他のナインにも伝染。森祇晶監督の胴上げが終わり、清原の元に駆け寄ったナインも目を真っ赤にした。清原は祝勝会場ではナインにビールをかけて回り、床にダイビングした様子も記されている。

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2020年4月16日のニュース