張本勲氏 新型コロナで混迷の今こそ「プロの矜持」「日本の団結心」見せる時

[ 2020年3月29日 07:46 ]

張本勲氏
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 新型コロナウイルスの感染拡大により、プロ野球は開幕が延期されるなど過去に例のない混迷に陥っている。「球界のご意見番」であるスポニチ本紙評論家の張本勲氏(79)は、チームが練習できない環境でも選手にはプロフェッショナルとしての強い自覚を求めた。さらに選手やファンだけでなく、日本の国全体で苦難を乗り越えるよう力説。再びグラウンドに球音が戻ってくる日を願った。

 私が東映に入団したのが1959年。それから60年以上になるが、野球界がこんな事態に陥るのは初めてだろう。阪神・藤浪ら3選手の感染にも驚かされた。経路も不明。ウイルスには目に見えない怖さがある。阪神はチームとしての練習も大きく遅れてしまう可能性もある。ただ、5球団でリーグを始めるわけにもいかない。他球団にだって感染リスクはある。そうなれば、開幕どころの騒ぎではなくなってしまう。

 私個人としては、全143試合の消化は難しいのでは、と考える。仮に開幕が5月以降にずれ込んだら、オールスターやCSはやらず、日本シリーズは優勝チーム同士で対戦。ダブルヘッダーも駆使する。過密日程になれば投手はもちろん、選手にしわ寄せが来るだろう。ただ、彼らはプロフェッショナルだ。その「矜持(きょうじ)」を今こそ見せる時だと思う。

 週末、練習を中止にした球団も多かった。今後もさまざまな制約が待ち受けていると思うが、練習は個人でもできる。投手は走ること。野手はマシン打撃があり、素振りを繰り返すことも可能だ。その懸命な「姿勢」こそがファンに伝わる。野球は決してなくならない。いつか、必ず我々の元に返ってくる。その時に「ああ、彼らこそプロだ」というプレーでファンを喜ばせ、勇気を与えてほしい。選手も不安や、動揺もあるだろう。その中で最大限の努力をする。それが「プロ」だ。

 今回の事態で、平和だからこそ野球ができるんだということを改めて痛感している。広島で生まれた私は、5歳の時に被爆した。戦後、全員で立ち上がった日本は本当に豊かな国になった。現在の新型コロナウイルスの感染拡大は国家の一大事だ。日本という国には団結心がある。見えない敵を相手に「明日は我が身の可能性も」との思いを全員で共有し徹底して予防をしていかなければ。

 野球がない日々は本当に寂しい。無観客でのオープン戦は味気なかった。ファンの応援を背にチーム、選手が思う存分競い合う。そんな「あっぱれ」な日々が、誰をも幸せにしてくれる日常が、一日も早く戻ることを願ってやまない。(本紙評論家)

 ◆張本 勲(はりもと・いさお)1940年(昭15)6月19日生まれ、広島県出身の79歳。浪華商(現大体大浪商)から59年に東映(現日本ハム)に入団。巨人、ロッテでもプレーし、日本プロ野球最多の3085安打を放った。59年に新人王、62年にMVP。首位打者には日本タイ記録の7度輝いた。ベストナイン16度。通算成績は2752試合で打率.319、504本塁打、1676打点、319盗塁。90年に野球殿堂入り。

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