天理・岩崎 骨折の痛み忘れ最後まで笑顔

[ 2010年8月13日 06:00 ]

<履正社・天理>3回無死、天理・岩崎は左前打を放つ

 【夏の1ページ 天理1―4履正社】もう右手の痛みは忘れていた。涙はない。試合後、天理・岩崎は大声で語りかけた。「ありがとう、みんな。楽しかった!」。最後は笑って終わると決めていた。

 「こんな超満員の中で試合をできた。不完全燃焼だったかもしれないけど楽しめました」
 何があっても最後まで出るつもりだった。今年センバツの1回戦(対敦賀気比)は右ひじじん帯を断裂して4回途中で交代。3点リードのチームはそこから逆転負けを喫した。そんな岩崎を再びケガが襲う。奈良大会の準々決勝。死球で右手甲を骨折した。それでも「痛いなんて言ってられない」。決勝まで出場して甲子園へやってきた。
 完治はしてない。試合以外はギプスで固定。風呂でも体を洗えないから仲間に背中を流してもらった。骨にいいと聞いて毎日200ミリリットルの牛乳を3本飲んだ。「昔から熱があっても試合に行っとったからね」。トラック運転手の仕事を休んで駆けつけた父・仁さん(45)は言った。4打数1安打。チーム唯一の得点を挙げ、最後まで試合に出続けた。「泣くなよ」。笑顔で2年生に声をかける岩崎の目に、大粒の汗とは違った輝きの滴も光っていた。

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2010年8月13日のニュース